茨城県信用保証協会

元気企業

バックナンバー

カブトプラテク株式会社

少量多品種を武器にニッチな市場で日本一を目指す!

 カブトプラテク株式会社
 http://www.kabutoplatec.co.jp/
  代表取締役 加部東 伸一
 

 事業内容 /合成樹脂精密加工

 店  舗   /茨城県東茨城郡茨城町宮ケ崎向山1436-16

 創  業   /昭和45年
 (法人設立:昭和49年年5月)
       

 

 みなさんは、「エンプラ」または「スーパーエンプラ」という言葉を聞いたことがありますでしょうか。「エン」は"エンジニアリング"、「プラ」は"プラスチック"の略で、どちらもプラスチック素材の名称なのですが、普段私たち一般消費者が目にしている「汎用プラスチック」とは大きく違います。
 「エンプラ」とは、機械部品や構造材料などの工業用として用いられるプラスチックのことで、主に金属の代わりとして自動車部品や機械部品、電気・電子部品のような工業用途に耐えられる強度と耐熱性を備えた高機能樹脂のことです。そして、より強度や耐熱性に優れたものが「スーパーエンプラ」と呼ばれているのです。

 今回は、この「エンプラ」、「スーパーエンプラ」素材に切削や曲げ、溶接など精密加工を施し、その優れた技術力で100社を超える取引先から厚い信頼を勝ち得ている企業、カブトプラテク株式会社をご紹介します。

 

先代の急逝により、ひとりの作業員から経営者へ

 

 プラスチック素材の加工業と聞くと、熱を加えドロドロになった樹脂を型に入れ加工するいわゆる「射出成形」を思い浮かべますが、同社ではマシニングセンタや旋盤加工機などの加工機を利用し、樹脂の塊や板を切ったり削ったりしてつくられる精密部品加工が中心であり、主に医療機器や産業用ロボットなどの工業機械の部品を製造しています。
 同社は、昭和45年に加部東伸一社長の実父が創業。平成14年に先代の急逝により加部東社長が代表者に就任しました。「プラスチック加工でできないことはない」がセールスポイントという同社加部東社長にお話を伺いました。


材料の合成樹脂の塊。用途により材質は大きく異なる。― 急に社長になったわけですが、その当時の状況はどうでしたか? ―

「会社内部の混乱はさほどでもなかったのですが、父が亡くなった時、私は一人の作業員でしかなく経営に関する知識はまったくありませんでした。そのため取引先の方々からは、今後の弊社を不安視する声があがっていました。私としてはそういった意見が出るのが悔しく、その気持ちをバネに必死で頑張ってきました。」

 

― 経営に関する知識はどのように学ばれたのでしょうか? ―

「とにかく経営については素人ですから、勉強のためメイン銀行が主催する経営者セミナーに参加したんです。それがきっかけでさまざまな業種の方々とお付き合いさせていただいているのですが、私が何の知識もないと分かると他の経営者の方から、『お前はそれでも経営者か!恥ずかしくないのか!!』と言って本気で怒られました。その方々にはさんざん怒られ、泣かされもしましたが、一方で決算書や商取引に関する知識など、経営に関するさまざまなことを教えていただきました。危機感を持ち本気で努力するようになったのはそれからですね。今ではたいへん感謝しています。」

 

高度な精密加工技術と小ロット多品種生産が武器

 

マシニングセンタ。工場内は最新の設備がずらりと並ぶ。― 御社の強みをお聞かせ願えますか? ―

「最大の強みは、最低部品1個から最大でも500個といった小ロット多品種生産ということです。さまざまな精密加工機械を駆使し、精密な部品をつくる技術力は他社に負けませんし、『どうしてもこの部品が1つだけ欲しいんだよな』といった取引先の細かなニーズにまでお応えしております。この業界は市場規模があまり大きくないため、スケールメリットが出にくい業種であり、大手企業が参入してくるリスクなどもあまりありません。」

 

― 現在の取引先や製品の内容は先代から引き継いだ部分が多いのでしょうか?―

「いいえ。父の時代には絶縁材などの受注が多く、これほど多品種の製品はつくっていませんでしたし、取引先も某社が80%を占めていました。私の代になって、取引先が1社に偏っていたのではその受注に左右されることが多く、リスクが大きいという判断から、少量多品種に戦略を変更し、取引先も数十社にまで増やしたんです。」

 

溶接加工作業。― しかし、急に取引先を増やすといっても簡単ではなかったのでは? ―

 「営業に伺っても最初は、『この設備とこの技術がないと無理だよ』といってよく断られましたね。ですから、多少無理しても先に設備投資をしてしまったんです。当時は自分で営業をし、工場に戻り、寝ないで機械のオペレーションをし、試作品をつくって納品するなど何でも一人でこなしましたね。その甲斐あって徐々に取引先から技術力を認められるようになり、業界内での知名度も上がりさまざまな業種の会社から受注がいただけるようになりました。」

 

最終工程の製品梱包作業。― プラスチック製品の加工業は、アジア諸国などとの競争が激しいと聞きますが? ―

「技術的に低い水準でつくれる製品は確かにそうですね。しかし、弊社の製品は0.01mmといった誤差も許されないほど精密な製品をつくっており、技術的にすぐに追いつかれるとは思っていません。そのため三次元測定器(製品の検査を行う機械)による厳密なチェックを行うなど、万全の品質管理体制をしいています。」

 

― 今後の目標についてお聞かせ願えますか? ―


「この業界のなかで日本一になりたいと思っております。そのために、時には思い切った設備投資も行いますし、人材への投資も惜しみません。従業員には『わざ・こころ・もの』が豊かになるように努力しようと話しています。従業員みんなの技術の向上が会社の利益につながり、その自信が心の豊かさを生み出し、ひいては物質的な豊かさをもたらすことになるのです。そうしてみんなの努力が結集すれば、日本一もさほど難しいことだとは考えておりません。」

 

おわりに…

 

事務所内の様子。 少量多品種を強みとし加部東社長のもと大きく成長した同社ですが、ニッチな市場に特化するというのは、その市場自体が消滅してしまうというリスクも孕んでいます。しかし、同社の場合、さまざまな分野の取引先を確保しているため、リスクは分散されていると言えるでしょう。
 また、単にニッチ分野に特化するだけではなく、多品種を扱うため煩雑になりがちな工程管理は、POPシステムを導入することで工程管理を一元化し、短納期で製品化するなどの対策を講じ、取引先の細かな要求にも応じています。


 
 積極的に最新の設備を取り入れ、常に新しい技術への挑戦を続ける同社は、取引先にとって高付加価値製品を供給する必要不可欠な企業となっています。当協会としても同社が更なる飛躍を遂げることを心よりご期待申し上げます。

▲Top