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株式会社 日本アグリ

作る喜びと食べる喜びをつなぎ、「食の幸福」を全国にお届けする

 

栗原社長

株式会社 日本アグリ

 

代表取締役 栗原 昌之

所 在 地

茨城県つくば市谷田部1512-1

事業内容

農産物の販売、食品製造加工、農業に関するコンサルタント

創     業

平成16年9月
http://www.aguri.cc/

 

 

生産・分析・流通が一体となったシステムづくり ~「信頼される野菜」を目指して~

 

 

同社の入口にかかっている“緑提灯” 「仕事帰りにちょいと一杯♪」というときに、みなさんはどんなお店に行きたくなりますか?赤提灯(あかちょうちん)の下がっているお店?いやいや、食にうるさい人は"緑提灯"でなくちゃ。

 「なに?その緑提灯って??」という方に簡単にご説明します。緑提灯とは、国産食材を主に使っている飲食店をPRする運動で、約40%にまで低下したわが国の食糧自給率を少しでも向上させようとするボランタリー活動のシンボルです。詳しくは、ホームページ(http://midori-chouchin.jp/)をご覧になっていただきたいのですが、中国産冷凍餃子への農薬混入事件に代表されるように、食にまつわる事件が頻発するなか、国産の安全な食材が食べられるということで、にわかに注目を集めています。
 

 この緑提灯の運動に見られるように、近年では消費者の食の安全・安心に対する関心が高まってきており、食品の流通履歴を追跡する"トレーサビリティー"という言葉も今や聞きなれたものとなっています。(スーパーなどでは、生産者の名前の入った商品をよく見かけますよね。)

 つくば市谷田部に本社を置く株式会社日本アグリは、平成16年創業とまだ若い企業です。同社は関連企業3社と「日本アグリグループ」を形成しており、それぞれの法人の役割は、下図のようになっています。
 概略を説明すれば、TRC(つくば農業科学環境研究センター)の研究により得たデータをもとに営農指導を受けた農家の方々が作った農産物を㈱螢の杜が仕入れ、㈱アグリバンテックが流通・販売するといった流れになっており、㈱日本アグリはそれらの農産物の流れを管理し、プロデュースする役割を担っています。
日本アグリを中核に、グループ全体で有機的に事業を展開している

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 同グループはTRCの設立によりスタートしました。当初、TRCは数軒の農家により、農産物の成分や土壌を科学的に分析・研究することでよりよいものを作り、消費者にアピールしていこうという趣旨で設立された団体でしたが、平成16年に株式会社化されました。
 
 栗原社長は、大学の農学部をご卒業後、県内の有力な米穀卸売業者などに勤務していましたが、縁あってTRCの研究に協力することになります。


 そして、数人の同志と日本アグリグループを設立することになりますが、それには次のような思いがあったのです。

 

「勘と経験に頼っていた従来の農業に科学の視点を導入することで、生産効率が上がり、農産物の成分分析・認証を行うことでその付加価値を高めることができます。さらに、流通から販売まで一貫して携わり、その農産物の優れた点を消費者にアピールすることで、『信頼される野菜』として差別化を図ることができます。分析・生産・流通をトータルにサポートすることで、真面目に農業に取り組んでいる日本の生産者を応援していきたいと考えたのです。」

 

 生産者が丹精込めて素晴らしい農産物をつくったとしても、流通していくなかで、つまり消費者の口に入るまでに何らかの問題が発生したのでは努力が無駄になってしまう、生産者へのアドバイスから、流通・販売まで一貫して関わり、農産物の価値を直接消費者にアピールできるシステムの構築が必要だという思いがあったのです。

 

 

地道な営業を積み重ね、全国各地に会員の輪を広げる

 

 現在では、同グループの会員は全国各地に広がっており、その数は1,000軒を超えています。また、販売先は都内の大手ホテルグループや外食産業などをはじめとし、多数の顧客を確保しています。
 しかし、ここに至るまでには大変な苦労があったようです。

 

「事業がスタートした当初は会員さんを募集するのも、できた野菜を販売するのもいわゆる飛び込み営業でしたから、作った野菜を持って飲食店を訪問して回ってもまず買ってくれるところはありません。しかし、実際にお店で取り扱い、お客様から好評をいただいたことで徐々に信用を得ることができ、少しずつ取引量が増えてきた感じですね。最初は本当にナス一個を売るところからのスタートでした(笑)」

 

 栗原社長は、このビジネスでの最も難しい点は、「農業=自然を相手にしていること」と言います。農産物はいつも同じ量、同じ品質の商品が用意できる訳ではないため、不足分が発生した場合はどうするのかといった問題が常にあります。これに対しては、不足分は一般の市場から補うことをあらかじめ顧客に了承してもらい対応しているようです。

 

 

「地域資源活用事業」と「循環型食品リサイクル事業」への取り組み

 

 

社長室には様々な許認可証や資格証明書がずらりと並んでいる さらに、同社が新たに開始した事業に、 「乳酸菌を利用したキャベツの発酵食品」の開発があります。これは、原料に地元のつくば市や周辺地域で生産された、通常であれば廃棄されてしまう規格外のキャベツを使用し、県の工業技術センターが漬物用に開発した乳酸菌を利用し加工するというもので、今年3月、国から『地域産業資源活用事業』の認定を受けました。味は従来の漬物とは違いサラダ感覚で食べられるものであり、健康指向の強い消費者に向けてネット販売なども計画しています。

 

 また、同社は農業を通じて、 「循環型食品リサイクル事業」のサポートにも取り組んでいます。これは、農産物を納入している大手ホテルグループから出る食品の残渣に、農業残渣(もみ殻・廃菌床など)を混ぜて堆肥化し、それを契約している圃場に供給することで再び農産物の栄養分として利用する、といったものです。単に堆肥化するだけではなく、堆肥に含まれる成分の分析を行うため、常に安定した安全な堆肥のみを供給することができるのです。さらに、堆肥の原料・成分、農作物の種類や栽培方法の違いに応じた栽培試験データを蓄積することができるため、生産者にとっては個別の施肥設計と栽培指導が受けられるといったメリットもあります。

 

 

おわりに…

 

 

 同社が取り組む事業は、消費者が求める「食の安心・安全」を確立しつつ、生産者の努力に見合ったリターンが確保できるという点で、食に関わるすべての人々を幸せにするものであり、その意味で同社は、まさに"作る喜びと食べる喜びをつなぐかけ橋"となっています。
 そして、農業が衰退し、先進諸国に比べ危機的にまで低下した我が国の食料自給率を底上げするための改善策のひとつとして、有効なモデルを示していると言えるのではないでしょうか。

 


 
 同社のチャレンジはまだ始まったばかりです。今後も当協会としてもこのような取り組みを応援していきたいと考えています。そして、みなさんも一杯やるときは"赤提灯"ではなく、できるだけ冒頭にご紹介した"緑提灯"のお店に入るよう心がけましょう!

 

 

 

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