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有限会社 タンゲ製作所

ネジ付き部品に特化し、オンリーワンの技術を確立

田家社長

有限会社タンゲ製作所

 

代表取締役    田 家  泰 明

所 在 地

茨城県ひたちなか市田彦591

事業内容

金属加工業

(ネジ付プレス部品専門メーカー)

創     業

昭和32年
URL http://www.i-s-d.or.jp/TANGE/

 

 

タップ+プレス同時加工で低コスト・高品質・不良品ゼロを実現!

 

独自の技術で微細部品の加工も実現!

 

 有限会社タンゲ製作所は、ひたちなか市田彦に本社工場を置き、ネジ付き部品製造を行っています。ネジ付き部品は、電子機器をはじめとし、自動車から日用品にいたるまであらゆる分野で使用されているものですが、従来はプレス加工を施した後、別工程として切削加工によりネジ穴を開けるというように、その製造工程は大きく2つに分かれていました。そのため、手間がかかり、また、ネジ未加工品などの不良品が混入するなど品質維持の面でも限界がありました。そこで「タップ加工をプレス加工の中でできれば、飛躍的に作業効率が上がりコストも削減できるのでは」と目を付けたのが同社でした。

 もともと大手電機メーカーの下請けを行っていた同社は、プレス加工の自動化とタップ加工で蓄積したノウハウをもとに、金型内でプレスとタップ加工ができる『タップ加工付順送金型』を開発。これにより、①タップ漏れやタップ不良などの不良品が出ない、②工程の短縮による短納期の実現、③高機能・高品質かつ大幅なコストの削減、を実現しました。また、この技術の開発により、それまでの切削技術では難しかった微細な部品へのタップ加工も可能となりました。

 

「競争力を維持するには他社の真似のできない技術を磨き、お客様にとって付加価値のある製品を作る必要があります。しかし、いろいろなことに手を出すほどの余裕はありません。そこで我々が選んだのがネジ付きプレス部品に特化することだったのです。経営資源の限られた中小企業にとって大切なのは、"これしか出来ないけど、これは一流ですよ"という"こだわり"を磨くことにあるではないでしょうか。」

 

 特殊技術を有している同社ですが、田家社長は加工技術に関しての特許出願はしていません。そして、「すべての技術に関して特許を出願するのではなく、その内容により出願するか、しないかのメリハリをつけるべきである」と言います。なぜなら、特許を申請した場合、その製造方法などが公開されてしまいますので、かえって模倣されてしまうリスクが高まるからです。時には、特許出願するよりも、ノウハウとして社内で管理した方が、戦略として望ましい場合があるからです。
(特許取得とノウハウ管理については「経営ブレイクスルー(知財戦略~その2~)」をご参照ください。)

 

 

 高い技術力によりコスト競争力を維持

 

 

 

 さて、プレス加工業界といえば、ここ十数年でグローバル化が進み、大手企業が中国をはじめとする新興国へ生産拠点を移したことから、国内企業が大きな打撃を受けました。しかし、同社はさほど影響は受けなかったそうです。

 

 

「新興国がこれほど早く日本に追いついてきたのは、何より生産技術の面でデジタル化、機械化が進んだからだと思います。製造工程の中でデジタル化、マニュアル化できる部分は、日本と同じ機械を導入し数値を入力すればいいのですから、同じ製品を作るのはさほど難しいことではありません。しかし、我々が持っているような技術・ノウハウは製品を見ても製造方法まで分かりませんからそう簡単には真似できません。それと、中国などではコストが安いため、手間のかかる製品でも人海戦術でカバーできてしまいます。この点もそれを上回るコスト競争力のあるものを、製造技術で実現できれば仕事が減ることはありません。」

 

 

新製品開発への挑戦

 

「インサートナット」のチラシ

 

 私たちユーザーの目に入ることはあまりありませんが、同社の製品は、携帯電話やゲーム機、パソコン周辺機器など実に様々な製品に組み込まれています。しかし、こうした製品は陳腐化するのが非常に早く、技術革新により受注が激減するリスクも高いそうです。そのため、同社では常に次の時代を見越して、新たな技術開発に取り組んでいます。

 

「市場において、ある商品の魅力がなくなり売れなくなれば、当然その商品に組み込まれている部品も必要とされなくなります。そこで、弊社では数年前から、より汎用性の高い製品、つまり何にでも使ってもらえる製品を開発しようと考え取り組んできました。」

 

 そして同社が新たに開発したのが"インサートナット(※注1)"と呼ばれる部品です。これは、電子機器をはじめとし、ネジ止めが必要な製品には必ずと言っていいくらい使われている部品です。この部品も通常、切削加工により作られるのですが、やはり同社ではオリジナルの金型とプレスの技術だけで製造しています。金型+プレス加工により製造することで、品質の安定性と低コストを実現し、さらにRoHS指令(※注2)の規制の対象となっている鉛やカドミウムといった有害物質が混入する恐れもありません。高品質、低コストに加え、現在注目されている環境適合性をあわせ持った、まさにこれからの製品です。

 

「重要なのは、お客様は"かたち"を求めているのではなく"機能"を求めているのだということです。より小さく、より軽く、より低コストなものをより早く作るためには、どうしたらよいかを追及することです。」

 

 この新製品も取引先から評価され、徐々に引き合いが出てきており、今後受注の柱となることが期待されています。また、"インサートナット"の製造設備確保のため、那珂市向山に新工場の建築を開始しました。平成21年3月完成予定とのことであり、今後のますますの発展が期待されます。

 

 

 

インサートナット(小さなものは米粒ほどのサイズ)見た目も美しい。筆者は最初ジュエリーの部品かと思いました。(注1) 
インサートナットとは、プラスチック成形・樹脂成形に使用するナットのこと。プラスチックや樹脂は、金属より機械強度が低い為、それらをつなぎ合わせると容易にジョイント部が外れてしまう為、金属製のインサートナットをそのプラスチックや樹脂内に埋め込む事により、接続部の強度をアップするのが目的。

 

(注2)
RoHS(ローズ)指令はEU(欧州連合)の環境規定である。「RoHS」は「restriction of the use of certain hazardous substances in electrical and electronic equipment」の略で,「電気・電子機器における特定有害物質の使用制限に関する指令」という意味になる。地球環境や人の健康を守ることを目的に,電気・電子機器で使われる化学物資の利用を制限している。その化学物質とは,(1)鉛,(2)水銀,(3)カドミウム,(4)六価クロム,(5)ポリ臭化ビフェニール(PBB),(6)ポリ臭化ジフェニルエーテル(PBDE)──の6種類である。 EU加盟国内では2006年7月1日から,これらの化学物質を一定量以上含む電気・電子機器を販売できなくなっており、部品のレベルからRoHS指令に対応する必要がある。

 

 

おわりに・・・

 

 

 昨年末、大手自動車メーカーが半世紀ぶりに赤字転落することが報道されるなど、世界的な景気低迷の影響が顕著に表れ、我が国の経済も不透明な状況が続いています。中小企業にとって厳しい状況が続きますが、田家社長は次のように話してくださいました。

 

「景気がいい時はどんなものでも多少高くても売れます。しかし、景気が悪くなるとどの会社もより品質が良くて、しかも低価格のものを求めるようになります。確かに世の中全体の仕事は減りますが、地味でも技術を磨き、コスト競争力のある、お客様にとって付加価値の高い製品を作ってきた企業にとっては、逆に仕事が集中する可能性だってあるのです。」

 

 同社は不透明な情勢のなかでも決して後ろ向きにならずに、明確な戦略と次世代のビジョンを描き、着実に布石を打っています。私たち保証協会も、同社のような日本の産業を支えている企業の力になれるよう、日々努力して参りたいと思います。

 

 

 

 

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