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新日本工芸 株式会社

神社・寺院の授与品の奉製を通して、社会の感性の昂揚に貢献する

 

 

 

 

「も~い~くつ寝るとお正月~♪」って少し早いですかね。みなさんは、お正月

にする事といったら何でしょうか?一年のスタートは初詣、ついでにおみくじを引いてその年を占い、そして去年いただいたお守りを納める代わりに新しいお守りをいただいて帰る、という方は多いのではないでしょうか。


 また、受験の際などは「最後は神頼み!」とばかりに、神社にお参りに行った経験をお持ちの方もたくさんいると思います。日本人は信仰心が薄いなどと言われていますが、今でもこのような風習は日本独特の文化として受け継がれています。

全国各地の神社仏閣の授与品を製造

 

 さて、今回ご紹介する新日本工芸株式会社は、こうした神社・寺院で取り扱うお守り、お札、絵馬、おみくじなどの授与品や熊手などの縁起物を製造している珍しい企業です。これらの製品は私たち日本人にとってたいへんなじみ深いものでありながら、どこでどのように作られているのかあまり知られていません。なかなか目にすることのできない、お守り、お札などが作られる舞台裏に潜入してきました!

 

 

北は北海道、南はハワイまで、オリジナルの授与品をお届け

 

原反と製作途中のお守り

 

 新日本工芸㈱は、水戸市河和田に本社兼工場を置き、お守り、お札、絵馬などの授与品や熊手などの縁起物を製造しています。取引先(と言ってよいかどうか分かりませんが)となる神社・寺院は、北は北海道から南はハワイにまで至り、なんと約1500先にものぼります。
なお、業界の特徴としては、極端に多品種少量型の手工業的な業態であり、同業者の数は全国でも200社程度と、他業種に比べると少ないようです。

 

 

 お守りやお札は、織物(「原反」と呼ぶそうです)や和紙など日本の伝統的な素材で作られています。なかには、海外から仕入れている材料もありますが、原反は京都府の西陣、和紙は愛媛県の川之江市など、原材料によって古くから有名な生産地があり、今でもそれぞれ国内の各地方の企業から仕入れているそうです。

 同社では、一部半製品を仕入れているものもありますが、基本的に材料の加工から組み上げまで一貫して行っており、製品のデザインもオリジナルのものです。「お守りや絵馬のデザインなんてどれも似たりよったりでしょ」と思う方もいるかもしれません。しかし、各神社の授与品をよく見比べれば分かるのですが、ひとつひとつ異なっており個性があります。

オリジナルのヨコ型のお守り

 

「昔はお守りといえば、だいたい形が決まっていて、色も赤と紫があればよかった。しかし、今は各社が様々な材質・形状の製品を考案し競い合っており、何かしら新奇性のある製品を提案できなければ生き残れません。とは言え、あくまで授与品ですから、あまり奇抜なものを作るわけにもいきません。授与品であるという基本を押さえつつ、時代に合ったものを生み出すデザイン力が求められています。」

 

 同社が数年前に考案した製品に、ヨコ型のお守りがあります。これは、「女性がバックに入れて持ち歩くなら、タテよりもヨコの方がかさ張らないし、下げるためのヒモもいらないだろう」という社員のアイデアから生まれた製品で、「お守りといえばタテ型」というこれまでの既成概念を打ち破った新製品といえます。また、この製品は形だけでなく色もカラフルであり、これまでお守りとしては使用されていなかった黒も用意しています。若い方を中心に好評を得ており、納入数は徐々に増えているそうです。

 

意匠登録は競争力維持のかなめ

 

 なお、新製品開発において大きな意味を持つのが、意匠権の登録です。同社では、新製品を市場に投入する前には必ず申請を検討します。実際に新製品の販売開始後、より安価な他社製の類似品が出回ることもまれではなく、知的所有権としての保護が自社の成長性を維持する上でたいへん重要なのだそうです。

 

 

 

 

社員の知識とノウハウこそが財産

 

お守りの文字の印字作業

 

 さて、この業界においてたいへん特徴的なのは、神社側の行事に合わせて進行する年間スケジュールです。
やはり1年間で参拝客が一番多い時期は、お正月です。そして、それ以外の時期ですと、節分と七五三の時期に参拝客は集中しています。したがって、授与品の需要も1月、2月、11月に集中しており、その時期の売上は年間販売量の約80%を占めているそうです。

 

取材時の10月は倉庫には半製品がぎっしり保管されていた

 

 同社では、過去3年間の納入実績をもとに1年間の販売量の予想数値をはじき出し、春先から原材料の発注を開始します。そして、8月頃までの間に各製品を半製品の状態にまで仕上げ倉庫に保管しておきます。さらに、年末近くなるとそれらの半製品を組み合わせ、完成品にまで仕上げ、次々と全国の神社に発送するのです。毎年工場内は、暮れに近づくにつれて出荷待ちの段ボールが積み上げられ、お正月が過ぎると一気にカラになる、というサイクルが繰り返されることになります。

 

 製品のパーツや種類がかなり多く材料や在庫、工程の管理がとても煩雑なうえに、繁忙期が極端に偏っているため、人員の配置、バランスがとても重要な業務となります。では、アルバイトなどを活用し、繁忙期を乗り切っているのかといえば、同社では正社員以外は採用しないそうです。

 

「弊社では正社員にこだわって採用を行っています。何故かというと、製造工程は、技術を必要とする手作業が中心となるため、採用の都度、アルバイトを指導していたのでは仕事にならないのです。また、お守りひとつとっても、何種類もの材料から作られており、原反の種類、ヒモの材質、色、飾りに使用する玉や、全体の形、サイズが神社によって細かな指定があり、それらの組み合わせにより何通りもの違った製品になります。その材料、部品に関する詳細な情報はベテラン社員にしか分かりませんし、正直言うと、私にも詳しくは分かりません(笑)。弊社では、そうした知識や技術、ノウハウを持った社員そのものが財産なのです。」

 

 

 多種の製品を取り扱っているため、営業担当者の苦労も並じゃありません。自社の製品の特徴はもちろんのこと、戦略上、他社製品に関する情報についても頭に入れておく必要があります。



 

「営業担当者には、入社から数カ月間は製造現場で材料や製造方法に関する知識を熟知し、その後、ベテラン社員と一緒に、実際に全国の神社やお寺を訪問させます。製品を見ただけでどの会社の製品か見分けられるくらいでなければ一人前とは言えません。さらに、営業において重要なことは、神社や寺院はそれぞれ歴史的背景が異なり、考え方が大きく違うため、そうした特徴をつかむことです。そして、その情報を開発・デザインなどの担当者にフィードバックし、具体的に新たな製品開発に結び付け、提案型の営業ができることが理想です。」

 

 大曽根社長はこのように述べ、各部門の社員同士の意思疎通がとても重要だと話していました。

 

 

おわりに・・・

 

 

 同社の作っている製品も工業製品であることには変わりませんが、その用途・役割はテレビや自動車の部品などとは全く違ったものです。そして、取引先も小売店などではなく、人々がそれぞれの思いを秘めて参拝にくる神社やお寺です。そのあたりの微妙な思いを大曽根社長は次のように述べていました。

 

 

「ふだん信仰というかたちで意識していない方でも、日本人ならば神社に行けば自然と手を合わせたくなる、そんな気持ちが心の奥にあるはずです。製品開発などに関するお話もしましたが、私どもが作っているのは、お土産やノベルティーグッズではなく、神が宿り、人が願いを込めて手にするものです。これからもそうした思いを大切にしながら仕事に励んでいきたいと思います。」 

 

本社兼工場

 

 確かに、通常意識はしませんが神社や寺院は、今でも私たち日本人にとって心の拠り所となっており、お守りやお札などは、現代社会においても大切な役割を担っているのかもしれません。同社はそうした授与品独特の役割と日本の伝統文化を重んじつつも、既成概念にとらわれることなく、時代が求める製品を提供してきました。

 

 

 今回の取材を通して、これまで何気なく受け取っていたお守りも、ひとつひとつ人の手によって作られたものだということを改めて認識し、これまで以上にありがたいものと感じることができそうです。
 みなさん、お正月には一年の幸せを祈りつつ、頂いたお守りをしばし眺めてみてください。きっと作った方の思いを感じることができ、より豊かな一年を送れることでしょう。

 

 


 


 

 

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