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有限会社 エイトプラン二ングオフィス

「日本一楽しい写真館」を目指して ~衣裳・美容・写真をトータルプロデュースする写真館~

 

 

 楽しかった思い出や過ぎ去っていく人生の一瞬一瞬を残しておくことができたらどんなに素晴らしいことか、そうした人々の思いを実現したのが写真技術でした。そして、その撮影技術を駆使して七五三、成人式、結婚式など、人生のかけがえのない瞬間に立会い、思い出をカタチにする場所、それが写真館、写真スタジオです。

 

 顧客にとっての写真館、写真スタジオの最大の魅力は、衣装・美容・着付けなど全てを館内で準備し、撮影までワンストップで完結できる点にあり、各社は多様な設備でいろいろな角度・ポーズの写真を撮り、モニターでプレゼンテーションし、気に入ったものを選んでプリントを注文するという『デジタルセレクトシステム』を導入するなど、顧客にとって付加価値の高い写真を提供できるようサービスの向上にしのぎを削っています。

 

 近年、この業界では低価格と若い従業員によるカジュアルな接客を武器に子供専用の写真スタジオを得意とした大手企業の成長が著しく、県内での競争も激しくなっています。そのような中、今回ご紹介する有限会社エイトプランニングオフィスは、日立市をはじめ、水戸市など県北地区を中心に「エイトスタジオ」、「ストロベリィ館」という名称でスタジオ写真館事業を展開し、安定した収益を確保しています。また、今年3月には新たにつくば市に進出し、計8店舗体制とするなど攻めの姿勢を崩していません。

 

 

写真との出会い

 

 吉澤社長とカメラとの出会いは、中学時代までさかのぼります。ご自身も「ませた中学生だった」と笑って話してくださいましたが、好きな女の子の気を引くために姉から借りたカメラでその子を撮影しプレゼントしたそうです。その時の思い出が原体験となり、カメラや写真に興味を持つようになったと懐かしそうに振り返っていました。

 

 高校時代、岡村昭彦や沢田教一などのカメラマンに憧れ「何としても自分用のカメラが欲しい!」との思いから修学旅行の積立金を流用するという高校生にしては高度な裏技(?)を使い、見事、名機『アサヒペンタックスSP』を手に入れました。以後、写真の魅力にとりつかれ、いつかこの世界で身をたてよう、そう決意していたそうです。

 

 高校卒業後は都内の写真専門学校に入学しましたが、より実践的な技術を学ぶために退学し、某テレビ局から写真関連の業務を請け負う会社に入社。テレビ番組のスチール写真に関する仕事に従事し、基礎的な技術を習得しました。吉澤社長は、誰かに手解きを受け、体系的な知識を学んだわけではなく、多くは仕事上での経験と業界誌などから得た知識をもとにここまで独学で歩み実績を積んできた、いわば"たたき上げタイプ"のカメラマンでした。

 

 

写真撮影業を開業するも赤字続き…

 

 

 さて、昭和53年、吉澤社長は、郷里に戻り日立市大久保町で写真撮影業として事業をスタートさせました。当時は、写真の撮影からDPE(撮影したフィルムの現像・焼き付け・引き伸ばし作業)、カメラ等機材の販売まであらゆる業務をこなしていましたが、事業は赤字続きで大変だったそうです。

 

 このままでは潰れてしまう、そんな不安がよぎり始めた頃、市内に結婚式場がオープンするという情報が舞い込みます。結婚式場の専属カメラマンとなれば安定した受注を得ることができる千載一遇のチャンスです。ところが、その結婚式場のオーナーのもとへ営業に通いますが、どこの馬の骨とも分からない若いカメラマンには面会すら許されませんでした。その後も、「作品さえ見てもらえれば」、その思いを胸に連日通いますが、先方の反応は変わりません。
 「次もダメだったらもう諦めよう・・・」そう考えていた当日はあいにくの雨。営業に出るのをためらいましたが、妻に励まされ重い腰を上げて足を運ぶと、なんと雨天のためたまたま外出を控えていたオーナーが話しを聞いてくれるというのです。

 

 そして後日、作品を見たオーナーから撮影技術を評価され、契約をもらうことができました。「本当にうれしかった。まさに恵みの雨、諦めないでよかった」と吉澤社長は振り返ります。

 

「平日限定、衣装無料レンタル」が大当たり

 

 

 その後は、結婚式場との専属契約で事業は軌道に乗り始めました。しかし、しばらくすると次のような不安が吉澤社長の頭をよぎりました。

 

「結婚式場が盛況なうちは良いが、そうでなくなった場合は共倒れになってしまうのではないか。このような他の業者に依存した"コバンザメ商法"は長続きしないのでは・・・。」

 

 また、結婚式のほとんどは土日に行われることから撮影のためスタッフ全員が出払ってしまうため、その時は必然的に店舗を閉めざるをえません。一方、お客さんのあまり来ない平日に店舗を開けているという状態になります。そこで、"平日にお店に足を運んでもらうにはどうしたらよいか"と、"結婚式場以外の独自の収益源を育てる"という2つの課題を解決するために考え付いたのが、七五三をターゲットとした次のような手法でした。 

 

 

 それは、高額にもかかわらず、一度しか使われない七五三用の衣装を、平日に撮影に来てくれたお客さんに無料で貸し出す、というものです。この企画は潜在的な需要を掘り起こし、一時はキャンセル待ちが出るほどの反響を得ました。


 さらに、この他にも広告関係、ファミリーレストランのメニュー表用の写真や学校のアルバムなどの仕事もこなすようになり、売上も伸び結婚式場に依存しない形での営業形態の確立に繋がっていきました。

 

 

魅力ある店舗づくり

 

 

 子供用の記念写真をメインにして成長してきた同社ですが、少子化の影響もあり本店の売上は徐々に下降気味となりました。マーケットを広げる必要性があると考えた吉澤社長は、多店舗展開を検討します。しかし、単純に店舗・スタジオを増やすのではなく、他社との差別化も意識して、各店舗に少しずつ変化をつけ、それぞれに違った魅力を持つ店舗づくりを心掛けています。

 

 

 例えば、平成14年に水戸市にオープンしたウェディングハウス「ル・シフォン」は、1階にドレスショップ、2階にスタジオと美容室、3階にチャペルというフロア構成にしました。これは、近隣に競合する写真スタジオが進出していたことから、あえてブライダル専門の店舗としたものですが、チャペルを備えたブライダル専門の写真館は県内に無かったことから、当時はたいへん注目を浴びました。

 

 

 

 

 また、平成20年には、県内初の庭園写真館「ストロベリーフィールズ」をオープン。ここでは、童話に出てくるようなヨーロピアン・アンティークの民家、南フランス・プロバンス地方の小屋、竹林の和風庭園などのセットの中で子供たちが遊びながら写真撮影をすることができます。もちろんメイクやヘアスタイルについても、各スタジオに専門スタッフが控えており大人顔負けのメイクアップが可能です。

 

 

 

 

 

バラエティーあふれる企画に共通する“顧客参加型”の視点

 

 

 ご紹介したようなオリジナリティーあふれる店舗展開に加え、同社の特筆すべきところはその企画力です。以下に一部の例を挙げます。

 

・ 子供たちにロック調の衣装を着てもらい撮影しようという『ロックンKIDS』などの撮影企画
・ 衣装メーカーとのタイアップによりお客様からデザインを募集してオリジナルドレスを製作
・ ショッピングモールを会場として子供のファッションショーを開催
・ 写真展を開催し人気投票を行う


 

 実にバラエティーに富んでいますが、どの企画にも共通しているのが「写真を通してお客さんに参加してもらい、一緒に楽しもう」という"顧客参加型"の視点といえそうです。
なお、吉澤社長は写真館の役割について次のように語っていました。実にバラエティーに富んでいますが、どの企画にも共通しているのが「写真を通してお客さんに参加してもらい、一緒に楽しもう」という"顧客参加型"の視点といえそうです。


 実にバラエティーに富んでいますが、どの企画にも共通しているのが「写真を通してお客さんに参加してもらい、一緒に楽しもう」という"顧客参加型"の視点といえそうです。
 なお、吉澤社長は写真館の役割について次のように語っていました。

 

「単に写真を撮ることだけが私たちの仕事ではありません。写真館でしか撮ることのできない"非日常"を写すこと、それが私たちに求められているサービスです。ただし、赤ちゃんや子どもは、良い写真を撮ろうと思ってもうまく撮れるものじゃありません。カメラマンには、撮影中のやりとりのなかでふとした瞬間を逃さず撮影する独特の技術が求められます。私たちにとって何より大切なことは、お客さんとのコミュニケーション能力と言ってよいでしょう。」

 

 写真スタジオにとって重要なことは、独創性のあるスタジオ(=ハード)、魅力的な企画(=ソフト)に加えて、様々なかたちで撮影に携わるスタッフそれぞれの技術とコミュニケーション能力であるということができそうです。

 

 

おわりに・・・

 

 様々な手法で顧客の満足度を高め、根強い支持を得ている同社ですが、魅力的な企画を次々に打ち出している背景には、「楽しくなければ仕事をしている意味がない」と言い切る吉澤社長の「フラットな組織づくり」が大きな役割を果たしているようです。
 なお、今回はキッズ向けの撮影を中心にご紹介させていただきましたが、今後はシニア世代をターゲットとした企画も検討しているそうです。

 

 「日本一楽しい写真館」を目指す同社は、これからも予想もつかないアイデアで人生のひとコマひとコマを楽しく演出し続けてくれることでしょう。有限会社エイトプランニングオフィスのますますの発展をお祈り申し上げます!

 

 

 

 

 

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