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株式会社 オヅ商会

科学と医療の最先端をサポートする理化学機器販売業者

 

 

 

研究施設の新設に合わせて創業 

 

 研究所などで使用される理化学機器や備品には、大型で高額の機器から毎日使用される手袋など細かな消耗品に至るまで、多種多様なものがあります。また、通常、研究者の方々はそれぞれの研究に最も適した機材を求めることから、機器の仕様に関して独自の注文をし、カスタマイズすることがほとんどです。そのため、適宜、各商品のメーカーに注文を振り分け、ユーザーである研究者の要望を伝えることのできる販売業者が必要とされます。

 

 昭和50年代から60年代にかけて、茨城県つくば市には都心から様々な研究機関が移転し、研究学園都市が形成されました。そして、昭和60年には国際科学博覧会が開催されたことで、「つくば」の名前は科学技術の集積地として国内外に広く知られるようになりました。今回ご紹介する株式会社オヅ商会は科学万博の2年後の昭和62年、小津信雄社長によって設立されました。

 

 

 

「研究機関」とひと口に言っても、その内容は医療、バイオ、物質・材料など様々なものがあります。また、時代時代でどの分野の研究が盛んであるかといった一種の"トレンド"のようなものがあります。そのため、どの分野の研究機関と取引関係にあるか、といったことが販売業者の業績に大きく影響します。

 

 

 同社は新しく次々と建設された研究機関からの受注を見込んで設立されましたが、事業の滑り出しは決して順調と言えるものではありませんでした。

 

「数多くの研究機関が移転してきましたが、理化学機器の販売については、すでに従来からの取引関係が確立されており、地元の、しかも後発企業である弊社が入り込む余地などありませんでした。」

 

 当時は、特にバイオ関連の研究が盛んであり、その分野の研究機関と取引関係にある企業は活況を呈していました。しかし、スタートしたばかりの同社の話を聞いてくれるところはほとんどなく、しばらくは"指をくわえてみている"時期が続いたそうです。
 そこで同社は、物質や材料の分野の研究を行う研究機関への営業を積極的に行い、少しずつ実績を積み上げることで地元企業としての知名度を確立してきました。

 

アフターサービスの充実

 

 

 ここ数年、この業界内でも受注獲得競争が激しくなり、一段と価格が重視される傾向が強まっています。同社も例外ではなく、売上単価の縮小、利幅の低下などの影響が出はじめています。そのため、「このままでは値段をたたき合い、体力を消耗するだけの競争に巻き込まれてしまう」といった危機感から、同社では次のような新たな取り組みを模索しています。

 

 これまで販売業者の多くは、ユーザーから注文を受けた商品を各メーカーに発注するまでを主な業務としてきました。納入後の機器のメンテナンスや修理については、ユーザーとメーカーが直接やり取りをすることが一般的だったといえます。
 しかし、これでは故障の都度メーカーの対応を待つことになり、ユーザーにとっては重要な研究の足止めを強いられることになってしまいます。

 

 

 そこで、同社では理化学汎用品については受注から納品・設置・動作確認までを行い、さらに、その後のメンテナンス・修理などアフターサービスまでを手掛けるように業務の幅を広げました。サービス面を充実させることで、他社との差別化を図る戦略です。


 

「ご連絡をいただければ担当者がすぐに駆けつけ、その場で修理可能なものか、メーカーに修理を依頼しなければならないのかを判断します。お客さまにとっては研究のロスタイムを抑えることができるメリットがあります。」

 

 

 

ユーザーのニーズにワンストップで応える企業へ

 

 また、今年度に入り、同社はさらにもう一歩踏み出しました。それは、研究室の設備工事の受注です。

 

 

「研究室に必要とされる設備工事は、一般の建物と違った特殊な知識が必要とされます。また、個々の研究者の方が、それぞれ理想としているレイアウトも異なります。ダクトや給排水の配管工事ひとつをとっても、その意図している要求を理解し、時にはアドバイスをすることができる専門的な知識が求められます。今年度、建設業の許可を取得しましたので、今後は自社で工事専門の社員を採用していこうと考えています。」

 

 

 こうした、販売からアフターサービス、さらに設備工事へ、という一連のチャレンジは、研究機関で求められるあらゆるニーズに対し、ワンストップで応えていこうとする試みと言えます。


 もちろん、新たな部門を立ち上げるためには、人的・資金的な負担が発生することになります。小津社長自身、「決断するまでには相当な勇気がいる」と語っているように、資金的に余力の少ない中小企業にとっては大きなリスクを伴います。しかし、こうした地元企業ならではの、小回りを生かした取り組みが少しずつ認められ、着実に売上に結び付いているようです。

 

 

おわりに・・・

 

 

 株式会社オヅ商会は、単に理化学機器の販売会社にとどまらず、研究者のニーズにトータルに応えられる企業へと進化しつつあります。今回の取材では、時代の変化を敏感に感じ取り、生き残りをかけて新たな姿へと脱皮しようとする、企業の力強い一面を見ました。

 

 

「私たちの取り組みはたいへん地味なものです。しかし、地域に根差した企業として、お客さまに喜んでもらうために新たに何ができるかを考え、新たな事業を育てていきたいと考えています。」

 

 

 

 こう語る小津社長には、数年後の同社の姿がはっきりと見えているようです。株式会社オヅ商会のますますの発展をお祈り申し上げます!

 

 

 

 

 

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