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株式会社坂本製作所

顧客の満足に応えるために、「サービス品質」を追及

市村智明社長

 株式会社坂本製作所
   http://www.sakamoto-ss.co.jp/
  代表取締役社長 市村 智明
 

 本社・工場/茨城県筑西市門井
         1973-30  
 事業内容/精密板金加工・各種組立
        (通信デバイスの外装部品)
 創   業/昭和14年4月
        (法人設立 昭和40年4月)

 

 インフォーメーションテクノロジーを支えて成長

 

 

 昨今のブロードバンドの時代、各家庭内のパソコンはもちろん、供給側の通信デバイス(機器)も日々技術革新が進んでおります。こうした中で、富士通関連の大手メーカーを主取引先として、通信デバイス製品の外装部品(架、シェルフ、表面版)を供給し成長を続けているのが、筑西市門井に事務所・工場をおく株式会社坂本製作所です。


 「物を早く安く」を経営理念とする同社は、金型・プレス加工から板金加工、組み立てまでを全て自社で行うことにより製品を低コストで提供し、その製品の品質と納期の早さに裏付けられた「信頼」により安定した受注を確保し、現在年商9億円まで届こうとしています。
 「しばらく続いたデフレスパイラルの時期を、お客さん(取引先)との信頼関係で乗り越えてきました。この信頼を得るためには、当たり前のことをこつこつと継続することはもちろん、いかにお客さんの満足するサービスを提供できるかにかかっていると思います。まだまだ〝ひよっこ〟ではありますが、今後もより一層お客さんのニーズに応えられるよう、体制を整えていこうと思います。」と市村智明社長は言います。

 

 

 畑違いの入社から、デフレ経済時期に社長へ

 昭和14年の創業と古い歴史を誇る同社ですが、市村現社長が入社したのは約20年前のことでした。入社する前は歯科技工士であった市村社長でしたが、父親と同社の役員が知人関係であったという縁で入社することに…。
 「歯科技工士と現在の仕事とは全然違うものでしたが、〝モノづくり〟という点では同じということ、また縁もありお世話になることに決めました。しかし、入社して2,3年間は、様々な業界用語や工場内の機械の役割もよくわからなかった。」と苦笑いしながら当時を振り返る市村社長。
 しかし、持ち前のポジティブな精神で、土日も工場に来て自ら機械を動かしてはその具体的な性能・役割を独学で学び、また、大手メーカーとの通信機器研究会の場等に積極的に参加しては、分からない点、疑問点等を関係者から勉強し、業界のニーズを把握していったそうです。こうした積み重ねが、同社の長所・短所、そして置かれている環境、可能性を探っていくことに繋がり、市村氏は徐々に同社の経営に携わっていくようになりました。
 そして5年前の平成14年5月に社長に就任、デフレ経済真っ只中の厳しい業界を生き残るために、市村新社長は様々な戦略を繰り出していきました。

 

 納品管理で差別化を図り、そしてさらに先へ

 

 まず市村社長が推進したのは徹底的な納期管理でした。
 「製造業の場合〝製品の品質〟が良くなければ生き残れないのは当然です。しかし更なる優位性を持つためには、お客様(取引先)がすぐにその製品を欲しい時、ジャストインタイムで納品をできることが大事と考えました。バブル経済隆盛期の頃は物さえ作れば納期が1ヶ月遅れようが買取ってもらえましたが、いつまでもそんな時代は続かない、そんな態勢では絶対に信頼を得ることができないと思っていました。私たちはこの納期管理等を〝サービス品質〟あるいは〝人的品質〟と捉え、社員一丸となって鋭意努力してきました。」
 実際、同社の納品の速さは目を見張るものがあります。受注を受けてから、1000種類もの様々な製品を全て1週間以内で納品できる体制が整えられているのです。これにより、顧客(取引先)から〝納期が詰まった製品の発注は坂本製作所へ〟という言葉が出るくらいの信頼を得て、着実に受注が増加していったそうです。
 また以前の同社は、取引先から請け負った通信デバイスの外装部品を単に製造するのみでしたが、近年は受注先の設計担当者とも交流を深め、同社も設計段階から参画、逆に同社から設計についても提案したり、さらには設計からの受注も行うようになりました。これにより製品コストも一層軽減できたことは言うまでもありません。
 さらには、同社の納品するものは外装部品であり最終製品(商品)ではありませんでしたが、内部の配線等も同社で行い限りなく通信デバイスに近い形で納品することも一部では行い始めました。いずれも市村社長が就任してからの新たなビジネス展開でした。
 「モノづくりの醍醐味は何もないところからあるモノを生み出すことの達成感です。そしてこの感動を味わうためには、追従ではなく常に先へ進む精神が大切と考えています。」

 

 

 若い管理職の登用で社内の活性化を図る

 

 前述の納期の速さは「人的サービス」の質の高さです。それではどのように同社は職員の質を向上させていったのでしょうか。
 最初はトップダウンで強引に〝アレをやる、コレをやる〟という風に多少の反対を押し切っても改革を断行していきましたが、数年前から30代の若い管理職を3名登用することにより、社内の活性化及び意識向上を図っていったそうです。
 「ベテランの職人は当社にとってかけがえのない存在です。しかし、保守的でかつ問題があっても全て自分で抱え込んでしまう傾向があります。反面、若い職員は非常にオープンな思考を持っており、モチベーションのパワーも大きいんです。この若い人材を管理職に昇格させることにより、上手くベテランのプロの技術を引き出し、かつ他の職員との融合を図ることが出来ればと思ったのです。」と市村社長。
 これにより、職場全体の意識向上・スキルアップに繋がり、トップダウンではなく中間管理層からの企画の底上げも増えてきました。そして、今では社長が何も言わなくても、各部門内で日々活発なミーティングが行われているようです。

 「今後は各部門のスキルをより一層アップさせるためにも、〝多能工〟の人材を育成していきたい。」と語る市村社長。顧客の満足に切りがないように、同社もサービスを向上させるために日々試行錯誤を繰り返し、新たなステージを模索しています。

㈱坂本製作所本社・工場 なお、同社は、次へのステージアップのために、平成19年3月に当協会の「保証付私募債」をご利用になられました。この「私募債」を利用される企業は、適債基準をクリアした優良企業の証でもあります。
 また、話は昭和56年の頃に遡りますが、当協会職員4名が同社の企業診断を3日かけて行い、利幅の改善や職員のモチベーションのアップ等について、ご助言させていただいたことがありました。その時の協会職員が、大きく成長した現在の同社の姿を見て、深く感銘を受けていたことも付け加えさせていただきます。

 同社のさらなる成長をご期待申し上げると共に、当協会としても今後ともお手伝いさせていただければと思います。



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