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有限会社マルヤ
県内屈指の豊富な品揃えにより熱烈な支持を獲得
有限会社 マルヤ 土浦本店 茨城県土浦市真鍋4-9-20 新鮮市場店 茨城県土浦市湖北2-2-1 石岡店 茨城県小美玉市栗又四ヶ2548 創 業 昭和62年 (法人設立 平成5年4月) |
今回は土浦市真鍋に本店を置き、酒類小売業を営んでいる有限会社マルヤをご紹介いたします。同社は、本店、新鮮市場店、石岡店の3店舗を展開し、地元一般顧客以外にも実に300先以上の飲食店を取引先として確保しており、平成19年4月期の年商は6億を超えています。
旗艦店である新鮮市場店には、種類豊富な焼酎や日本酒、ウイスキーなどがずらりと並び、希少でなかなか手に入らない商品も数多く見られます。店舗奥には厳密な温度管理がなされたワインセラーが設置されており、売れ筋のリーズナブルな商品から(私の)手が届かない高価な商品も保管されています。われわれが「お勧めのワインは?」との質問には店員さんが非常に丁寧に応対してくれました。
"街の酒屋さん"として安定した成長を続ける同社の清浦社長に、その秘密を伺ってみました。
酒類販売自由化による劇的な外部環境の変化にも柔軟に対応
清浦社長が事業を開始したのは昭和62年のことでした。
もともと酒類販売業は免許制がしかれており、需要調整上の要件として新規参入する際には「距離基準」「人口基準」および「人的基準」(※下記注1参照)の3つを満たすことが必要であり、清浦社長が事業を開始した当時は事実上、新規免許を取得することは困難でありました。
そのため、清浦社長は様々な食料品を販売するスーパーとして事業をスタートさせます。そして平成7年に酒類販売業の免許を取得し、現在のかたちへ業態を転換させてきました。
「当時は免許を取得するのが非常に難しかったため、酒類販売業者は規制の中で保護されており、比較的安定した業種でした。」
と清浦社長は振り返ります。しかし、「距離基準」は平成13年に廃止され、続いて「人口基準」についても平成15年に廃止となり、ここ数年で大幅な規制緩和が進みました。実質的に酒類販売業が自由化されて以降、異業種からの参入が相次ぎ、競争は激化しています。そのような劇的な環境の変化に合わせ、同社は様々な点で転換を行ってきました。
「規制緩和が進むにつれ様々な他業種からの参入がありました。当時、土浦市真鍋の本店と石岡店の2店舗で一般のお客様のみを相手に商売をしていたため、特に近隣の大手スーパーやコンビニエンスストアが酒類販売を開始した影響はたいへん大きかったです。」
そこで当社は売上の拡大が見込めない一般顧客向けの販売は売上を維持するよう努力しつつ、安定した売上が見込まれる飲食店など業務用酒類販売の営業を強化しました。
「現在、新鮮市場店は一般顧客向け100%ですが、本店は80%、石岡店は60%を業務用販売が占めています。ただ、業務用販売は掛け売りが主ですから、売上代金回収までの資金繰りの問題や焦付発生のリスクがあることも事実です。その点では金融機関さんや保証協会さんのアドバイスを受けながら資金繰りの調整を行っています。」
付加価値のある商品と豊富な品揃えで他店との差別化を図る
同業界の市場規模(酒小売業の年間販売額)は平成3年に6兆円を記録して以降、減少傾向にあり近年は3兆円台にまで縮小しています。また、特に代表的な酒類であり総消費量の6割を占めるビール・発泡酒などはディスカウントストアとの競合など熾烈な低価格競争が続いています。清浦社長にこうした環境変化への対応策について伺ってみました。
「確かに、現在は第3のビールなどに代表されるように、消費動向の低価格化が進んでおり競争は厳しい状況です。しかし、一方で希少価値の高い商品ならば多少高額でもインターネット通販などで積極的に買い求めるような傾向も見られます。そのような状況に対応するために当社では、現在人気の高い焼酎などは蔵元からの直接仕入を行い、日本酒は『日本名門酒会』を通じ全国各地から地酒の仕入を行うなど、県内では屈指の豊富な品揃えを行っております。また、ワインについては、「ワインアドバイザー」の資格を有している後継者の息子に仕入を任せているのですが、独自の仕入ルートを確立しているため県南地域では当店でしか取り扱っていない商品も多数あります。特に現在おすすめの商品であります『自然派ワイン(※下記注2参照)』は約100種類にのぼります。これは昨今の『健康志向』と『食の安心・安全』への関心の高まりに着目し販売を開始したもので"生産者の顔が見える商品"としてお客様の好評を得ています。」
「要するにビールなどの量販店との競合が激しく、利益率の低い商品は低価格で販売する一方で、それ以外の希少な商品や、お客様にとって付加価値の高い商品を豊富に取り揃えることで他店との差別化を図り、リピーターのお客様を確保するよう努力をしております。」
漫然とディスカウントストアなどとの廉売競争に巻き込まれるのではなく、時代の流れに即した戦略が大切だと話す清浦社長。昨年からは『楽天』サイト内の専門店市場に出店し、インターネットを利用した通信販売も開始。ボジョレーヌーボーの解禁時期には相応の成果をあげたようです。また、今後、高齢化の時代にあわせて昔のような"御用聞き"を行い、なかなか買い物に出かけられないお年寄りのいる一般家庭向けの配達業務も手がけていきたいとも話していました。
地道な経営努力がもっとも重要
経営理念は、との問いに、
「商売は当然いい時も悪い時もあります。でも大切なことは"商(あきない)"だからこそ"飽きない"でコツコツと地道な努力をしていくことがもっとも重要なんです(笑)」
と清浦社長は話します。お言葉通り、当社が時代の激しい変化に応じて様々な改革を行い努力を重ねてきたことはもちろんですが、同時に、清浦社長の実直で飾らないお人柄があるからこそ、地域密着型の企業として永年地元の方々に愛されてきたのだろうと感じました。
同社がこれからも"街の酒屋さん"として愛され続けることを願ってやみません。当協会としても引き続き応援させていただきたいと思います。
注1)「距離基準」…既存の酒販店から一定の距離離れていること。 注2)「自然派ワイン」…以下の点が特徴のワインのこと。 |