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有限会社 テクノエーピー
最先端のテクノロジーを吸収し、進化し続ける技術者集団
いきなりですが、茨城県の名物といえば何でしょう?
今回ご紹介する有限会社テクノエーピーは、制御装置や研究開発システムの構築、電子回路の設計製作などエレクトロニクス分野において優れた技術力を持った企業です。近年は、特に放射線計測分野の製品開発に取り組んでおり、J-PARCに設置された解析装置の開発に携わった実績をもつ、「小さいけれどキラリと光る企業」です!
多様な顧客ニーズに応える高い技術力
有限会社テクノエーピーの荒井社長は、地元電気部品メーカーの開発部門に勤務後、平成12年に同社を設立しました。はじめは「アパートの一室」を事務所としてスタートしたという同社ですが、創業時の業務は大きく分けて次の2つでした。
1つ目が「受託製品開発部門」です。これは主に大手電機機器メーカーなどからの発注を受け、電子応用機器を設計・製作するものであり、いわゆる外注先としての業務を請け負う部門です。
そして2つ目が、日本原子力研究開発機構や産業技術総合研究所、大学といった研究機関で使用される検査装置や研究開発装置などの開発を行う「研究開発システム設計製作部門」です。
この業務では、ナショナルインスツルメンツ社製の「LabVIEW」(※注)というアプリケーションを使用して制御プログラムを開発し、研究開発装置のシステム設計やソフトウェアの開発、メンテナンスに至るまでを一括して請け負います(いわゆるシステムインテグレーション)。
※「LabVIEW」とは、グラフィック型言語によってプログラミングすることのできる開発環境であり、主に計測用に用いられる。
多放射線計測分野への進出 ~自社製品の開発へ
平成15、16年頃までは、難易度の高いLabVIEW開発認定の資格を持つ技術者は全国的にも希少であったことから(当時、取得者は全国でも13人、このうち3人が同社の技術者)、この2つ目の部門は同社にとって成長の大きな推進力となると同時に、技術・ノウハウを蓄積する実践の場となりました。しかしながら、この業務はLabVIEW開発認定取得者が少しずつ増えてくるのに伴い、徐々に優位性が薄れつつありました。
そこで、より付加価値の高い、新たな業務を構築する必要性を感じた荒井社長が、次のステージを見据えて選んだ第3の部門が、放射線計測分野における自社製品の開発でした。
同社は、平成16年に東京大学物性研究所の「高分解能パルス冷中性子分光器」の改良工事において、中性子検出器の基盤開発を手掛けたことを皮切りに、放射線計測分野へと進出しました。翌年には、原子力に関連する知的財産権を利用できるようJAEAと実施許諾契約を締結。放射線計測に関する基本技術の指導を受け、ハンディ型放射線メーターを開発しました。
※「JAEAライセンス企業」とは、JAEAが保有する特許や実用新案等の知的財産権を、実施許諾契約に基づいて実施することを認められた企業のこと。「JAEAライセンス企業」に認証された企業は、呼称及びロゴマークを使用することができる。
そして、これまでに蓄積した技術・ノウハウをもとに、デジタルシグナルプロセッシング機能を搭載したマルチチャネルアナライザーをはじめとする各種の検出器や関連製品を開発し、自社工場で本格的な製作を開始しました。
技術力に対する強い執着
同社の強みは、社内にハードウェア、ソフトウェア両方に精通している技術者がいることにあります。また、その技術を持った社員たちを技術セミナーに参加させ、様々な資格試験に積極的にチャレンジするよう促すなど、技術習得に対する意欲が高いことも挙げられます。間もなく創業から10年を迎えようとしている同社ですが、一貫して技術力の向上にこだわり続ける理由をお聞きしました。
「弊社のような小規模な企業が生き残るためには、ひとりひとりが技術力を磨くこと以外に道はありません。このことを全社員が強く認識しています。そして、社員たちがモチベーションを持って業務に取り組むことができる場をいかにして提供するか、どうやってやる気を引き出すかということが経営者である私の課題だと思っています。」
技術力で他社に遅れをとれば競争力を失ってしまう、そうした危機感を経営者と社員が共有できていること、そして経営者は高い技術力を持った社員こそが自社の重要な経営資源であると認識しており、人材育成・技術開発に対して十分な投資を行う、これこそが同社の成長を支えている源泉であると言えそうです。
前職での様々な経験・知識が生きている
取材の中で荒井社長は、決算の内容に関してこれまでの実績と現状、そして今後の見込みを明確に話して下さいました。経営者の中でも、特に自社の数字を記憶していらっしゃる方だな、という印象を受けましたが、それもそのはず会社設立以来、経理処理はほとんどご自身で行っているそうです。
「経理処理は自分でやってはじめて分かることが多い。例えば、実際に今どれくらいの現預金があって、今期はどれくらいの利益が出そうなのか、償却はどれくらいまでが可能なのかなどは、設備投資をする場合など経営判断をする上でとても重要な情報です。全て人に任せてしまうとそうした感覚が鈍くなってしまうように思うのです。」
荒井社長はかつて技術者として勤務していた時代に、研究開発だけでなく製造現場で加工やハンダ付け、さらには経理の処理など何でもこなしたそうです。そうした知識と経験のすべてが経営者となった今に生かされているようです。
おわりに・・・
同社は、昨年(2009年)12月にひたちなか市馬渡に土地建物を購入し、事業所を移転させました。これは自社製品の開発・製造に本格的に取り組む、という次のステージを見据えた戦略に基づくものです。
新たな一歩を踏み出した同社は、今後さらに高度な技術に挑戦し、茨城県、いや日本の科学技術の発展に貢献し続けていくことでしょう。 有限会社テクノエーピーの更なる発展をお祈り申し上げます!
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