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株式会社 ひので屋

“生産者の顔が見える”高品質の青果物を安定供給する

 

 

 茨城県農政事務所の発表によれば、茨城県の農業産出額は、2008年に前年比4.9%増え、全国3位から2位に上昇しました(1位はやはり北海道です)。2位の座の奪還は、1994年に千葉県にその座を明け渡して以来だそうで、農業県としてのわが県の存在感がさらに高まったといえます。

 

 実は、平地が多く農作物の栽培に適した土地が多い茨城県には、メロン、栗、白菜、レンコンなど、全国でも指折りの生産量を誇る野菜がたくさんあります。今回は、そうした農作物のうちサツマイモを主力商品として集荷卸売業を営んでいる、株式会社ひので屋をご紹介します。

 

 

年間通してサツマイモを安定供給

 

 

 焼き芋、天ぷら、スイートポテト、大学イモ、芋ケンピ…。サツマイモは、荒れた土地でも育つうえ、栄養バランスにも優れていることから、江戸時代に飢饉の際の救荒作物として広まりました。今ではさまざまな料理の材料として使用されており、私たちの食生活にたいへん馴染み深い食材となっています。県内では特に鉾田市や行方市で栽培が盛んであり、実は茨城県は鹿児島県に次いで全国第2位のサツマイモの名産地なのです。

 

 今回ご紹介する㈱ひので屋は、「紅あずま」という品種を中心としたサツマイモのほか、ゴボウ、ジャガイモ、レンコンなどのいわゆる「土物野菜」を、主に県内の契約農家から仕入れ全国のスーパーや食品加工会社に販売しています。(各商品の取扱構成比は、サツマイモ70%、ゴボウ15%、ジャガイモ10%、レンコン5%となっています。)

 

 ㈱ひので屋の創業は、昭和15年、瀧喜一社長の祖父の代にさかのぼります。茨城県はサツマイモの生産地としては北限に位置しているため、昔から東北地方・北海道からの需要を支える産地として栽培が盛んでした。右の写真をご覧ください。これは当時の常磐線神立駅のホームを撮影したものです。山のように積み上げられているのはサツマイモの入った俵で、昔はこのように鉄道を利用して輸送されていたそうです。サツマイモは戦時中など食糧難の時代に、人々の食を支えたたいへん貴重な食材でした。

 

 

 

 

 瀧社長は父から事業を引き継ぎ、昭和60年に代表者に就任しました。商品は主に鉾田市や行方市の契約農家から仕入ており、各地の農家で収穫された野菜は同社のトラックで集荷されます。その後、工場に運ばれ泥や土を洗浄機によって洗い落したあと、様々な規格に合わせ選別され出荷されます。取引先はスーパーや食品加工会社など全国各地にわたっており、中には箱詰めするだけでなく、すぐに店頭に陳列できるよう決められた本数や重さに分けて袋詰めを行い、さらに値札などラベルを貼った上で納品しているものもあるそうです。

 

 

 同社の安定した商品供給態勢を支えているのが、定温倉庫です。
9月~10月に収穫されたサツマイモは、定温倉庫に運ばれます。そこで保存のために必要な「キュアリング(※注)」という処理を施された後、温度・湿度・炭酸ガスの濃度などが厳格に管理された状態で保管されます。これにより、品質を損なうことなく貯蔵することができ、年間通してベストな状態で顧客のもとに商品を届けることができるのです。

 

契約農家との深いきずな ~共存共栄に向けて

 

 さて、高品質の商品を安定して供給することは同社が単独でできるわけではありません。当然、優秀な農家の協力が不可欠となります。同社では農家とともに土壌の成分分析を行い、不足している成分を補った上で作物づくりに取り組んでもらったり、専門家を招いて農薬に関する勉強会を行っています。

 

 こうした付き合いから、中には親子三代にわたり取引を続けている農家もあり、冠婚葬祭には互いに招待し合うほどの関係になっているそうです。瀧社長は「この商売をしているとどんどん親戚が増えていく」と笑います。

 ところで日本の農業は後継者の不足により従事者の高齢化が著しく、今後一層の衰退が懸念されています。この傾向は茨城県においても例外ではなく、農作業の現場は事実上、海外からの研修生の手を借りなければ成り立たないほどだといいます。

 

「農家の繁栄がなくては、弊社の発展もありません。10年後にはいったいどうなってしまうのかと農業の現状をたいへん憂慮しています。」

 

 瀧社長はこのように述べ、流通業者は自社の利益追及だけでなく、農家の人々が前向きに生産に取り組めるよう、共存共栄を図っていく必要があると述べていました。

 

 

素材を生かした加工品づくり

 

 

 

 同社では、農産物販売のほかに数年前からサツマイモの加工品販売も行っています。(加工品部門は、別会社㈲スイートベジタブルが行っている。)具体的には、紅あずまや紫イモを使用した「芋せんべい」や「芋ケンピ」などの揚げ菓子のほか、甘納豆や甘露煮などを製造し、スーパーやJAの直売所などを通し販売しています。当初、加工部門は青果物としてはサイズなどが規格に合わない商品を有効に利用するためにスタートしたものですが、現在では事業の大きな柱に成長しています。

 

 私たちも「芋せんべい」「芋かりんとう」などをいただきました。他社の商品とは歯ごたえが違う上、味付けも芋本来の甘さと香りを生かしたものとなっており、たいへんおいしくいただきました。
 また、数年前に芋餡を使ったパンや弁当の惣菜としての材料の提供などで、コンビニエンスストアとの取引も開始しました。最近は焼き芋の材料としての需要が伸びているそうです。コンビニエンスストアとの取引では、安全基準などに関して厳格な品質管理が求められますが、「食品を扱う企業として勉強になる点は多い」と瀧社長は語っていました。

 

 

安定成長の理由

 

 

 近年、消費低迷が続いており、どの業種にとってもたいへん厳しい状況が続いていますが、同社は売上、利益ともに安定した成長を続けています。安定成長の理由について伺うと、瀧社長は人材と職場環境の大切さについて語って下さいました。

 

「『人は石垣、人は城・・・』という言葉がありますが、重要なのはやはり人、人材だと思います。弊社の社員はみんな一生懸命に働いてくれる人間ばかりですし、チームワークがいい。私が今こうして何の心配もなくネクタイを締めて社長室に座っていられるのも、みんなが懸命に働いていてくれているからです。私なんかいなくたって何の心配もない(笑)。そして、社員が気持ちに余裕を持って働ける職場でなければなりません。イライラした気持ちで仕事をしていると思わぬ事故やミスにつながります。」

 

 

 従業員の献身的な努力と結束力の強さが成長の源となり、忙しくてもどこか気持ちに余裕が持てる職場環境がさらに社員の力を引き出しているようです。

 

 さらに瀧社長は、「値段が高い安いというだけの商売」は長続きしないと述べ、地域に根差した企業として、様々なかたちで地元に貢献する姿勢や、工場の周辺環境への配慮も欠かせないと話していました。

 

おわりに・・・

 

 

 ご紹介してきたとおり、同社は創業以来一貫してサツマイモを中心とした青果物の販売を事業の柱としてきました。同社の前身である㈲日の出屋商店が設立されてから35年以上、初代が創業してからは約70年の時間が経過していますが、その間、農家から商品を集めて卸すだけの事業から脱却し、時代のニーズに応じてより美味しくて安全な商品を安定的に供給できる体制を整え大きく成長しています。

 

 「生産者と消費者をつなぎ、信頼される野菜を届けることが私たちの役割」と話す瀧社長。これからも"生産者の顔が見える野菜"の提供を通じ、私たちの豊かな食生活に貢献し続けてくれることでしょう。
㈱ひので屋の今後更なる発展をお祈り申し上げます!

 

 

 

 

 

 

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