明けましておめでとうございます。今年も当協会、そして「経営のサプリ」をよろしくお願いします!
さて、年末年始にかけて忘年会や新年会が続き、何かと居酒屋などに出入りする機会の多いこの季節ですが、今回は飲食店で私たちの疲れた体を一瞬でときほぐしてくれる名わき役、『おしぼり』に関するお話です。
来店者におしぼりを出すサービスは、日本ではごく当たり前のものとして定着していますが、海外の人々からは日本人の『もてなしの心』を象徴する独特の文化として捉えられているようです。暑い夏はひんやりと冷やして、寒い冬はホカホカに温めて。おしぼりは小さな布に過ぎませんが、人の気持ちをONからOFFへ切り替えてくれ、一年中私たちの心を和ませてくれています。
今回ご紹介する株式会社ヴィオーラは、水戸市に本社を置き、レンタルおしぼりの提供を中心に事業を展開し ている企業です。同社は、外食産業で使用するおしぼりにとどまらず、理・美容業者、介護事業者へのタオルの提供、レンタルマット、トイレタリー商品の販売など、様々な業界のニーズに応えるサービス体制を整え、衛生管理を徹底した製品づくりによって顧客の信頼を獲得し成長してきました。
環境の変化に即応できる経営の柔軟性
同社の歴史は、昭和37年、藤本社長の父が個人事業主として創業したことにはじまります。当時は、自宅を作業所兼事務所代わりに使用し、手作業で仕上げたおしぼりを水戸市内の飲食店に納めていたそうです。その頃、おしぼりを提供する同業者があまり多くなかったこともあり、取引先は順調に増えていきました。受注の増加に伴い、昭和52年に法人化、徐々に工場を新設・拡張し、機械化と設備の増強を進めてきました。
現在は、取締役会長を兄の藤本武男氏、代表取締役を弟の藤本昌宏氏が務めており、ご兄弟で経営を取り仕切っています。茨城県水戸市に本社工場を構え、福島県いわき市に営業所を設置し、茨城県全域及び福島県を中心に事業を展開しています。代表取締役である藤本昌宏氏にお話を伺いました。
おしぼりなどの繊維製品のレンタル、回収、洗濯を繰り返し行う事業は、総称して「リネンサプライ業」と呼ばれています。ユーザーは、サービスを利用することで、タオルなどの備品類を購入・保有・洗濯する手間から解放され、消耗によるほつれなどを気にすることなく使用することができます。
「プロである私たちのサービスをご利用いただくことで、より清潔なタオルをお使いいただけますし、布の傷みを気にすることなく、メンテナンスをする必要もありません。美容室などでは、従業員の方の負担が軽減されることで本業に集中できるため、作業効率が上がり、お店のサービスの質を上げることができます。」
なお、ダストコントロール商品、ホテルリネン、病院リネン、タオルなど、どのような製品をレンタルするかによって同じリネンサプライ業者でも取引先の業態が大きく異なってきます。同社では、創業以来、飲食店・ホテルなど外食産業を相手とした布おしぼり・紙おしぼりの取扱いを中心としてきましたが、この分野は市場全体が縮小する傾向にあり、理・美容室、エステサロン向けのレンタルタオル、病院や介護事業所で使用する身体清拭用のタオルも手掛け、サービスの幅を広げています。
ただし、同じ布製品であっても、当然、その用途によって求められる衛生管理の基準が異なります。同社では、厚生労働省の衛生管理基準を上回る独自の基準に基づき、製品によって工場・ラインを完全に分けて作業を行っています。おしぼりに関しては、機械と目視によって徹底した検品を行うほか、毎月、外部検査機関からの製品検査を受けるなど衛生面の管理を徹底し、品質に細心の注意を払っています。
おしぼりは“おもてなしの心”を伝える
同社のサービスの中で特徴的なものとして挙げられるのが、法人取引先に向けた「ビジネス用のおしぼり」です。これは、ビジネスにおいて来社したお客様におしぼりを出すことをおすすめするものです。
「おしぼりを使用するとほっとした気持ちになり、緊張がほぐれます。お互いにリラックスして商談をすることができますし、迎える側のご足労いただいた相手への『おもてなしの心』を伝えることもできます。」
同社は、おしぼりをビジネスを円滑にすすめるためのツールとして捉え、おしぼり・専用のトレイ・温蔵庫などを「レンタルおしぼりビジネスセット」として提案しています。これまでに、ハウスメーカーやカーディーラーなどでご利用いただいており、徐々にこの部門の売上が増加しているそうです。 夏の暑い日に、冷たい飲み物と一緒に冷えたおしぼりが出てきたら、「おっ、ありがたい、気が利く」と感じる方は多いのではないでしょうか。おしぼりをネタに一つ話題が増え、その後の商談もスムーズに進みそうです。
同社では、こうしたリネンサプライ業務のほか、外食産業で使用されるコースターやナプキンなどのテーブルウェアから、洗剤・スポンジなどの清掃用品に至るまで、あらゆる業務用消耗品の販売も行っており、飲食店で必要とされる備品類のほとんどを提供できる体制を整えています。流通面においても、小ロットの注文、翌日納品が可能な体制を確立しており、取引先からは好評をいただいているそうです。
飛躍のカギは社員のやる気とチャレンジ精神
同社は経営理念として次の4項目を掲げています。
1. 飛躍と成長を信じ、社員の幸せを確立させる 2. 社員の教育と育成を目指し、社会に貢献できる会社にする 3. 優れた企画、魅力ある商品を常に提供する 4. お客さまに目を向け存在力のある期待される会社を目指す
社員の幸せを第一に掲げていることに関して、藤本社長に「一番目は『お客様』ではないのですか」と伺ってみました。
「お客様が一番大事、顧客満足が最優先だという考えは私たちも同じです。しかし、お客様に満足いただけるサービスは、社員がやりがいをもって働ける会社、働いていて幸せを感じる会社でなければ実現できないと考えているのです。ただし、常に目標を掲げみんなでチャレンジする、そんな会社にしたいと考えています。」
同社では、社内にチャレンジ精神を醸成するため、数年前から「アクションプラン」という冊子を作成しています。これは、4人の幹部社員が中心となって毎年作成しているもので、全社的な目標を掲げるとともに、社員一人ひとりが自分なりの課題や行動目標をシートに記入したものを一冊にまとめたものです。自ら考え目標を設定することによって、行動に責任と自覚が生まれることを期待して行っているものです。
「アクションプランの作成は今年で6年目となります。はじめは、『やらされている』という感覚があったようですが、今では少しずつ定着し、社員の間にも自主性が生まれてきたように感じています。」
藤本社長は、『やらされている』ではなく、社員自らが『やろう』とする気持ちを引き出すことが重要、と強調します。なお、同社では障害者の雇用確保に力を入れており、社員90名のうち10名を超える方が働いています。藤本社長は、「誰でもやる気さえあれば必ず能力は伸びる。彼らはとても大切な戦力」であると語っていました。
大きな改革よりも毎日の小さな改善が大切
近年、リネンサプライ業、レンタルおしぼりの業界では、激しい競争が繰り広げられています。県内では撤退した業者も多く、10年前には、都内からの大手企業の進出により、一度に多くの顧客が移動したことがありました。同社でも、どう対応したらよいか分からないほどの危機感を味わったそうです。 しかし、藤本社長が「毎日の小さな改善こそ重要」と述べているように、同社は厳しい状況下においても、顧客からのクレームを大切な情報として捉え、品質の向上にひたむきに努力することで信用を築き、また、顧客のために自分たちが何ができるか、ニーズはどこにあるのかを考え、新たな分野にサービスの幅を広げることで顧客のすそ野を広げてきました。
おわりに・・・
以上ご紹介してきたように、厳しい競争を乗り越え成長してきた背景には、サービス向上に対するチャレンジ精神と目標達成への熱意がありました。そして、その熱意は、「気持ちいい!癒される!」といった、お客様の喜ぶ顔が見たいという社員の方々の思いによって支えられています。
みなさんも、これまで何気なく使っていたおしぼりに少しだけ注目してみてください。もし、そのおしぼりが他よりも少し温かいかな、と感じたら、それはヴィオーラのおしぼりかもしれません。同社のおしぼりの一つひとつには、社員の方々の愛情、そして、『おもてなしの心』がこもっているのですから。
株式会社ヴィオーラのますますの発展をお祈り申し上げます!
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