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マルキン米菓 有限会社 ・ 株式会社 都炉美煎本舗 (後篇)
本物にこだわり地域の人々に愛されつづける米菓製造・販売店 ~兄弟経営者が支える職人の味~
-3月号掲載の(前編)の続き-
それぞれが魅力ある看板商品を生み出す新たなステージへ
【マルキン米菓有限会社】
現在、金子昌弘社長が代表者を務めるマルキン米菓㈲は、主力の「とろ火焼」をはじめとする煎餅の製造を専門に行い、㈱都炉美煎本舗の他、問屋を通し各地の小売店に商品を供給しています。現在製造している商品は全部で8種類。醤油・サラダ・揚げ醤油と3つの味がそろったロングセラー「とろ火焼」は、贈答用としても引き合いが多く、常備されているご家庭も多いとか。(個人的にはサラダ味が塩加減が絶妙でおススメです。)
また、最近のヒット商品は「黒こしょう煎」です。この商品は、全国の美味しいお取り寄せ商品を掲載した本『美食の王様のお取り寄せ(来栖けい著)』でも紹介された商品で、噛んだ瞬間に黒胡椒の風味が口の中に広がり、後からピリッとした爽やかな感覚が追いかけてくるちょっと大人の味に仕上がっています。(お酒のおつまみとしてもいけそうです)
「原料となる米は全て国産米を使用しています。すでに粉末に加工された原料を仕入れ生地にしている企業も多いようですが、弊社では米のまま仕入れています。そのため焼く作業に入るまでにもかなりの手間がかかりますので、朝3時から4時から生地の仕込みを始めます。」
なお、一人前の職人になるまでには10年ほどかかり、金子社長自身、いまでも新たな発見があると言います。また、原料については、平成5年に天候不順で全国的に米不足となった時には国産米が手に入らず困り果てたそうですが、品質維持を優先し輸入米には手を出さなかったそうです。
「美味しい商品を安くご提供できるよう製造コストの削減に努力し、お客さんに還元するような企業でありたいと思っています。」
今後は機械を使わない昔ながらの手焼きの商品も販売していきたいと語っていましたが、味にこだわりつつもあくまで一般の消費者向けの商品づくりを主軸にしていくと話していました。
【株式会社都炉美煎本舗】
一方、金子靖社長が率いる㈱都炉美煎本舗は、現在、水戸市・ひたちなか市・日立市など県内7店舗を経営しています。和の温かさとモダンな雰囲気が漂う店内には、煎餅など米菓を中心に250点ほどの様々な商品が陳列されています。分社した当初は、マルキン米菓㈲の商品が大半を占めていたそうですが、幅広いニーズに応えるため、かりん糖をはじめとする甘味など他メーカーの商品も仕入れて販売しています。また、店舗の横、ガラスの向こうでは団子が焼かれており、出来立ての商品をその場で食べられるイートインスペースが設けられ、コーヒーや紅茶が無料で振る舞われています。
「このスペースは、一日約500人から600人のお客様にご利用いただいています。保育園にお子さんを送り届けた後に休んでいかれるお母さん方が多いようですね。」
短い取材中にも次々とお客さんが来店し、団子などを頬張りながら談笑する姿が見られました。「都炉美煎本舗」という場所が地域の人々の交流の場となっているようです。なお、筆者はあんこの団子をいただきましたが、生地は程よい弾力と焼き目が香ばしく、あんこ自体も豆の香りがしっかりと主張してくる大変美味しいものでした。それもそのはず、添加物を一切使用せず生地の原料となる米は県内のコシヒカリを、あんこには北海道の羊蹄地区産の最高級小豆を100%使用しているそうで、兄の金子昌弘社長同様、生地の仕込みは3時4時という朝早くから社長ご自身が行っているそうです。 また、最近のヒット商品は、「かりんとう饅頭」です。同様の商品を他メーカーでも製造していますが、同社のものは原料にこだわり手間を惜しまずつくられているもので、売り切れ必至の人気商品なのだそうです。和のお菓子にとどまらずレーズンサンドなど洋菓子も手掛けるなど、金子社長は「美味しいものなら何でも」と商品開発にも意欲的です。
「商品づくりにも店舗づくりにも言えることですが、お客様を引き付ける〝新しい何か〟を生み出そうと考えること、そして、経営者は常にお客様と同じ視線を持ち、自社の商品や店舗を評価しながら仕事をすることが大切だと考えています。」
「大したことはしていない」金子社長はこう語りながら笑顔を見せましたが、毎日の業務の中で小さな『気づき』を積み重ねてきたことが商品や店舗づくりに生かされているのだと感じました。
おわりに・・・
米の加工品については、近年ニュースとなった「事故米」騒動の影響で、米トレーサビリティー法(※)が施行され、平成23年7月1日から商品パッケージ等に原料の生産地の情報を明示することが義務付けられます。国産米の需要が高まり価格の上昇が懸念されますが、原料の産地によって商品の選別をする消費者が増えることが予想され、両社のように以前から国産米にこだわり、ひたむきに努力してきた業者にとっては追い風となりそうです。 ※「米トレーサビリティ法(米穀等の取引等に係る情報の記録及び産地情報の伝達に関する法律)」とは、米及び米加工品の記録(取引等の記録の作成・保存)と伝達(産地情報の伝達)を義務付ける法律。
ご紹介してきた通り、戦後、大洗町の小さな煎餅店という同じところからスタートした両社ですが、今では生き残りをかけてそれぞれ独自の道を模索しています。しかしながら、2人の経営者は「良い原料を使い、美味しいものを手ごろな価格で提供したい」という共通した理念で繋がっており、それを実践することで消費者から選ばれ続けています。そして、「美味しいもの」と「手ごろな価格」を両立させるために、経営者自らが手間を惜しまず、職人として商品づくりの核となる部分を担っている点も見逃せません。
★紙面の関係上、書き切れませんでしたが、ご紹介した以外にも美味しい商品がたくさんあります。ぜひ一度、 「都炉美煎本舗」に足を運んでみてください♪
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