茨城県信用保証協会

元気企業

バックナンバー

小池株式会社

創業明治17年、「かゆいところに手の届く」消防ポンプ自動車を開発製造する老舗企業



 消防ポンプ自動車の開発製造及び防災用品販売を営む小池株式会社は、古河市に本社を置き、埼玉県加須市に営業本部・工場(下の写真)を有しています。
 平成23年11月15日、本社と工場を訪問し、小池裕之代表取締役にお話を伺いました。



業歴127年、老舗企業のあゆみ



 江戸時代、古河は下総国古河藩の城下町、日光・奥州街道の宿場町、利根川と渡良瀬川が合流する舟運の拠点として栄えました。
 明治時代になると、古河周辺には養蚕農家が多かったため製糸業が発達し、古河町(現・古河市)の人口は急増しました。
 明治17年(1884年)、鍛冶職人の初代小池宗次郎氏が、古河町で鍛冶屋「鍛冶宗」を開業しました。
 明治32年(1899年)、薪を使う蒸気ボイラーの製造を開始し、当時の花形産業であった製糸業を中心に販路を拡大しました。
 明治35年(1902年)、屋号を「小池鉄工所」と改め、大正13年(1924年)、消防ポンプオートバイを製作し、現在までつづく消防自動車の生産がスタートしました。




 大正14年(1925年)、日本におけるT型フォードのノックダウン生産(注1)が、横浜市でスタートしました。
 その翌年、2代目小池宗次郎氏(初代宗次郎の長男)は、T型フォードを改造した消防ポンプ自動車第1号車を製造しました。改造はすべてハンドメイドで、職人が板金をたたき出して作りました。


(注1) ノックダウン生産とは、他国や他企業で生産された製品の主要部品を輸入して、現地で組立・生産する方式のことです。





 昭和13年(1938年)、戦時経済統制の影響を受け、大日本帝国海軍所管の横須賀海軍工廠指定工場となり、主に駆逐艦用の大型水管式ボイラーの製造を開始しました。





 昭和27年(1952年)9月、古河市の現・本社地に「株式会社小池鉄工所」を設立し、2代目小池宗次郎氏が取締役社長に就任しました。
 昭和50年(1975年)、業容拡大に伴い、埼玉県北川辺町(現・加須市)に工場を新築・移転しました。

 小池裕之・現社長は、学校卒業後、自動車部品販売会社と自動車販売会社勤務を経て、平成3年4月、30代前半で当社の代表取締役に就任しました。創業時の初代小池宗次郎氏から数えて6代目となるそうです。
 代表取締役に就任した当時のことについて、小池社長は次のようにおっしゃっています。

「小池一族が一同に会し、当社の後継者について話し合いをした結果、私が社長に指名されました。私は社長に就任するまで自動車販売会社に勤めていたので、消防ポンプ自動車については全く分からない状態でスタートしました。その当時、社長として一番苦労しました。」



消防ポンプ自動車のメーカー業界とユーザーの動向



 消防ポンプ自動車メーカーは全国に17社あり、ここ10年間では、年間1,000~1,400台の消防自動車が生産されています。
 平成16年8月、消防ポンプ自動車のシャーシフレーム折損事故が発生して以降、メーカー業界ではISO9001(注2)認証取得の動きが広がりました。

 一方、ユーザーである地方自治体では、財政難などの理由により消防車購入予算を以前より減らしています。
 さらに、消防自動車の平均使用年数は、平成7年頃が13~15年でしたが、現在では17~20年となり、使用期間は長期化しています。



(注2) ISO9001とは、国際標準化機構(ISO、本部:スイス・ジュネーブ)によって定められた国際規格で、製品やサービスの品質保証のために組織が構築すべき経営の仕組みが記されています。



フルオーダーで「かゆいところに手の届く」ものづくり



 当社では、年間15台前後の消防ポンプ自動車を製造しています。営業エリアは、茨城、栃木、群馬、埼玉、東京、千葉、長野の各都県にわたります。
 消防ポンプ自動車1台の製作期間は、シャーシが工場に入ってから日本消防ポンプ協会(注3)の検定合格まで、標準的なモデルで2~3か月かかります。シャーシが工場に入るまでの間は、受注の見込みが立てられる部品をあらかじめ製作しておきます。



(注3) 日本消防検定協会は、消防法に基づき設立された公的機関で、消防用機械器具等の品質・性能を保証するための検定・鑑定・受託試験等の業務を行っています。



 地方自治体の指名競争入札で落札すると、7月末から8月初めの頃、日野、いすゞ、日産ディーゼルなどのシャーシメーカーから工場に車両が入ってきます。
 その後、ポンプ・水槽タンク・各種装置の配管取付、ボディ板金、中間検査(注4)、ボディ塗装、完成検査の各工程を経て、陸運局でナンバーを取得し、早いもので11月くらいに自治体に納車となります。
 ただ、今年は震災の影響でシャーシの工場納入が遅れたため、今年度第1号車の納車は12月中旬にずれ込んでしまうそうです。



(注4) 消防ポンプ自動車は、塗装工程に進む前に、発注者による事前立ち合い検査を行います。





 当社では仕様を標準化せず、フルオーダーによるハンドメイドにこだわっています。そのこだわりの理由は2つあります。1つ目は、地域によって水利や道路の幅・勾配などが異なるため、地域の特性に合わせて消防自動車も1台1台設計が異なるからです。
 もう1つの理由は、消火活動に当たる現場の声を聞き、ユーザーの使い勝手を追求して部品1点1点の細部にわたり工夫を凝らしているからです。特に、中間検査時には、仕様書と異なる軽微な変更等の要望に対しても、可能な限り対応に努めています。


 また、平成21年9月、ISO9001認証取得により品質管理体制を強化しました。
  さらに、消防ポンプ自動車を長く安心して使っていただけるように、アフターサービスも万全の体制を敷いています。



おわりに



 当社は、平成15年に当協会の保証付私募債(社債の一種)を発行しました。

「保証協会さんには、私募債で大変お世話になりました。それ以降もいろいろとお世話になりまして、改めて感謝申し上げます。」

と、小池社長はおっしゃっています。

 120年以上にわたり培われた確かな技術と豊富な実績をもとに、飽くなきチャレンジとたゆまざる技術革新で社会に貢献する小池株式会社のますますのご発展をご祈念申し上げます。

▲Top