旭真空株式会社は鉾田市に本社・工場を構え、自動車ヘッドランプ部品等の真空蒸着加工(真空状態にした加工機械の中で金属や化合物などを加熱蒸発させ、物体の表面に均一に密着させるめっき処理法)をメインに事業を行っています。 平成25年5月30日本社を訪問し、大久保 一 代表取締役社長に話を伺いました。
創業の経緯
大久保社長の実父である大久保茂夫氏が、昭和47年に個人で塗装業を創業しました。大久保一社長は学校卒業後、農協に勤務していましたが、家業を手伝うために退職して事業に加わりました。 当初は玩具やプラモデル、トロフィー等のプラスチック製品の吹付け塗装を行っていました。 昭和49年の工場増設に伴い、当時新技術として注目されていた真空蒸着装置を導入し、また同年に法人化しました。 その後、徐々に工業部品の製造にシフトし、業容を拡大していきました。
真空蒸着加工とは
同社が行う真空蒸着加工は、以下の6工程からなります。
① 加工する素材の『治具取り付け』 ② 素材の表面の汚れを取り除く『純水洗浄』 ③ 素材とアルミの密着度を高めるため下塗りする『アンダーコートUV(紫外線)塗装』 ④ 熱、紫外線により塗料を硬化させ、耐久性を増す『乾燥』 ⑤ 真空中でアルミを蒸発させ、素材をアルミでコーティングする『真空蒸着』 ⑥ アルミ膜を保護し、シルバー、ゴールド、クローム等の着色を行う『トップコートUV
塗装』
めっきする金属の溶けた溶液に素材を浸してめっきする方法に比べ、環境への負荷が小さく、製造コストも低く抑えられることから、自動車メーカーでは、真空蒸着加工部品を積極的に採用しています。
時代の変化に対応した技術力の追求
大久保社長は創業からこれまでを振り返り、
「景気浮沈による取引先の生産動向に左右され、雇用を守るための受注確保に苦心してきました。」
とおっしゃいます。 昭和55年頃から取引を深耕し、同社の主力取引先となっていた石岡市内の大手時計メーカーの工場が平成13年頃に生産拠点の海外シフトで工場を閉鎖した際には、自動車部品の受注を拡大し、経営悪化の危機を乗り越えてきました。 プラスチック成形用金型を取引先から預かり、プラスチック成形から表面加工まで一貫対応できる体制を整えることにより、受注の拡大につなげていったそうです。 そのような一貫体制と高い技術力が評価され、東証一部上場企業である㈱小糸製作所や市光工業㈱との直接取引を行うことができるまでに会社を成長させ、現在では売り上げの大半を占めるまでになっています。
「高まっていく取引先の技術的な要求に絶えずこたえ続け、受注を着実にこなしていくことが何より重要なのです。」
と、大久保社長はおっしゃいます。 同社では、国際認証である「ISO9001」を平成20年に取得し、さらに、真空蒸着加工の全6工程のうち2工程を不要とし、コスト削減や不良品の発生率低減が可能な「低真空RFプラズマ重合装置」を導入するなど、日々技術力の向上に力を注いでいます。
おわりに
トヨタの高級車ブランド「レクサス」や高級車「クラウン」向けのヘッドランプ部品など、日本の技術の粋を集めた数々の製品が同社により生み出されていることを知り、大きな驚きを覚えました。 不安定な為替相場や国内生産の空洞化など、企業を取り巻く環境は厳しさを増していますが、どのような時代にあっても日本が得意とする「創意工夫」を凝らすことで、雇用を守り企業を成長させていくことができるということを大久保社長から教えていただきました。 今後のますますのご発展をお祈り申し上げます。
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