株式会社エス・ジー・シーは結城郡八千代町に本社、同八千代町と常総市に工場、東京都板橋区に東京支店を構え、住宅建材(断熱材・建築用金物・木材等)の設計、製造、販売を行っています。
平成25年9月10日、結城郡八千代町にあるつくば工場と常総市にある常総工場を訪問し、富田雪男代表取締役にお話を伺いました。
当社のあゆみ
富田社長は学校卒業後、自動車メーカーや建材販売会社で経験を積み、昭和58年8月に生まれ育った結城郡八千代町で、アルミサッシやユニットバス等の施工販売業を個人で創業しました。当初は自社製品は持たず、大手企業から仕入れた建材を施工販売する業態で順調に事業を拡大し、平成2年5月に当社を設立しました。
独自製品の開発と経営革新
平成7年頃、日本経済が混迷を深める中で、富田社長は会社や雇用を守り、製品の価格決定における優位性を確保するために、独自製品の開発を決意します。
仕事柄、富田社長は住宅建築現場に足を運ぶことが多く、建築現場を回る中で様々な課題を目にしたことから、それら課題を解決する製品の開発に着手します。
平成18年に販売を開始した自社開発の建築用金物「JSメタル」は、これまでの木造住宅の工法を一新する画期的な製品です。
現在の木造建築においては、木材を複雑に加工し、それを現場でつなぎ合わせ、ボルトナットで固定するほぞ接ぎ工法が主流です。
しかしながら、ほぞ接ぎ工法には、次の①~③の欠点があります。
①木材の複雑なプレカット加工が必要で、木材加工時の資源ロスが大きい。
②木材接合部を細く加工したうえで接合部の強度を保つには、職人の高い技能が要求される。
③金属のボルトを木材に貫通させるためにヒートブリッジ現象(外壁と内壁の間にある柱や梁が室内に熱を伝える現象)が発生しやすい。
JSメタルは木材の複雑なプレカット加工を必要とせず、JSメタルと専用の太さ10mm程のピンで木材同士を固定するだけで強固な強度を確保することができ、ボルトも使いません。施工期間も従来に比べ大幅に短縮することが可能です。
さらに、在来工法では30坪の住宅を1棟建てるのに11~12㎥の木材を必要としますが、JSメタルを使用することで複雑な加工が不要となり、1棟につき0.9㎥程度の森林資源を節約できるメリットがあります。
2011年3月の東日本大震災後、東北地方でJSメタルを用いた仮設住宅が108棟建築され、その短工期と施工コストの低さから被災地の復興に大きな貢献を果たしました。
このほか、当社では、ポリエステル繊維系断熱材「ペットウール」(商標登録済)や遮炎機能付き軒天井パネルといった画期的な住宅建材を次々と開発し、多くの特許を取得しています。
「ペットウール」は、寝具・ペットボトル・衣料の材料として使われる安全なポリエステル製で、再生ペット繊維を50%以上使用した、エコマーク認定の環境に優しい製品です。
遮炎機能付き軒天井パネルは、パネルが火災で高温になると、パネルの通気穴に埋め込まれた素材が膨張して穴を塞ぎ、延焼を防ぎます。
人の力
富田社長はJSメタルの開発当時を振り返り、
「試行錯誤の連続で、開発には4年の歳月を要しました。製品の開発は私一人の力だけでは到底できず、産学官の連携と多くの方々の協力が大きな力となりました。」
とおっしゃいます。
また、富田社長は創業から30年を振り返り、
「これまで出会ってきた人に恵まれたこと、ただそれに尽きます。社員や取引先など、会社に関わる人一人ひとりを大切にすることは会社を経営する上でとても重要です。それが良い出会いにつながっていくのです。」
とおっしゃいます。
富田社長は企業経営において、何よりも社員のメンタル面のケアに一番気を使っているそうです。人を大切にする富田社長ならではのお考えだと思いました。
おわりに
現在、富田社長は木材の難燃性を高めるための特殊加工を研究しているそうです。
お話を伺う中で、製品開発の裏には数え切れないほどの失敗があり、それを乗り越えて成功に結び付けるには、継続する力、人と協力連携する力、飽くなき好奇心、飽くなき探求などが大切だということを富田社長に教えていただきました。
今後のますますのご発展をお祈り申し上げます。