元気企業
2016年09月
有限会社早瀬塗装工業
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代表取締役 早瀬 喜市 創業 昭和58年 事業所 茨城県常総市豊岡町丙3836-1(本社・工場)
福島県福島市清明町1-2 ピュアクレ ール清明町101(営業所)事業内容 塗装工事、除染工事 電話番号 0297-27-6677
有限会社早瀬塗装工業は、常総市に本社・工場、福島県福島市に営業所を構え、商業施設、博物館等の内装の特殊塗装工事と、福島第一原発の原発事故で汚染された建物の除染作業などを行っています。
平成28年6月10日、常総市の本社を訪問し、早瀬喜市代表取締役にお話を伺いました。
当社のあゆみ
早瀬社長は、もともと貿易船の船員で、世界中を巡っていたという異色の経歴をお持ちです。出航すると何か月も帰宅できず連絡も取れない仕事のため、心配した家族から船を降りて何か仕事を探してほしいと懇願され、船の修理で馴染みのあった塗装業に転職しました。塗装工事会社で修行した後、昭和55年に千葉県我孫子市において早瀬塗装店を創業します。その後昭和58年に法人化を行い、有限会社早瀬塗装工業を設立しました。高い技術力から信用を高め、事業を拡大する中で、平成3年に旧谷和原村(現つくばみらい市)に工場を開設しました。平成18年にはさらなる事業拡大のために、常総市に工場を移転新築し、平成25年には福島県福島市に除染事業を行う福島営業所を設置し、現在に至ります。
事業内容
当社が主に手がける塗装は、塗装により大理石や木目、錆びた金属などの風合いを表現する特殊塗装で、商業施設の内外装工事でよく用いられます。世界的に有名なアパレル店やファーストフード店、博物館等を手がけてきた輝かしい実績があります。工事は、日本全国のほか、海外で行うこともあります。取引先は店舗デザインなどを行う大手ディスプレイ会社が中心で、発注を受けると取引先の設計者と打ち合わせを重ね、設計者のイメージを具現化できるように技術的な課題を克服し、新たな技法を開発しながら施工していきます。高い技術力が要求されることから、工事単価は通常の塗装工事の10倍~20倍にもなるそうです。
「昔から負けず嫌いの職人気質なので、技術では誰にも負けたくないという思いがあります。常に人ができないことをやっていくことで、会社の技術を高め売上につなげているのです。」
早瀬社長は力を込めます。
常総市の本社写真。鋼板の外壁を木目調に塗装し、温かみのある外観へリニューアル
技術力を支える社内体制
当社の社員は、白・黒・赤・黄・紺の原色を配合することで、何万色もの色見本から必要な色の塗料を必要な分だけ無駄なく作りだすことができます。壁の色を見ただけで、どの原色をどれだけ配合すればその色に合わせることができるか瞬時に分かるそうです。また、塗装に使う道具は、ハケだけでなく、ヘラやスポンジ等さまざまな道具を表現する風合いに合わせて駆使して仕上げていきます。
「職人の世界は、年功序列ではありません。若年でも年配でも腕次第で、技術があれば高額な給与を支給しています。現場は5人1組で担当し、3人のベテランが、下の人や見習いの面倒みるようにしています。3人のベテランの作業から、自分に合うベストなやり方を目で盗んでもらうことで技術を高めています。」
早瀬社長は技術力を支える社内体制について明かしてくださいました。このような体制は、極めて低い離職率や、業界では珍しい女性の採用にもつながっています。工場内には練習用の大きな壁があり、新技法の開発や練習が行われています。人材を育成する体制と完全実力主義、社員のみなさんが遊び心を持ちながら日々切磋琢磨する社内風土が技術の向上や伝承を支えているのです。
塗料の調合と色合わせ
大理石のような質感の塗装
除染作業への進出
専用開発したスピナー
高圧洗浄後の汚染水を回収し“移染”を防ぐ
「もともとは、関東で局所的に汚染されたホットスポットの除染を行っていました。しかし、当時混乱の中で行われていた除染は、高圧洗浄で洗い流すだけで、作業で流れ出た汚染水が新たな汚染を生む“移染”でしかないことにいち早く気づき、危機感を覚えたのが本格的に事業化したきっかけです。」
早瀬社長は当時を振り返ります。科学的な根拠に基づく除染を行うため、当時はまだ誰も持っていなかった高精度な線量測定器を集め、除染後の汚染水を回収できる吸引洗浄機を開発し、特許も取得しました。集めた汚染水は、凝集沈殿剤で水と放射性物質を分離し、浄化してから流しています。
除染作業では、塗装工事で用いる高圧洗浄技術や、塗料の混じった有害な廃水を凝集沈殿剤で浄化し、環境汚染を防止する技術が大いに役立っているそうです。
当社が開発・特許を取得したこの「吸引回収工法」は、現在福島における除染作業の主流となっています。
平成25年には福島県福島市に営業所を設置し、福島の復興に向けて全力で取り組んでいます。
今後の展望について
早瀬社長は経営者としての長い経験を振り返り、オイルショックやリーマンショックなど、受注が激減し工事単価も大幅に引き下げられた苦い過去を思い起こされます。「弊社はサービス業なので、業績は景気動向に大きく左右されます。これまでの経験から5年に1度は大きな波がくるというのが実感です。良い時に悪い時のために備えるのが経営者の役割だと思います。」
早瀬社長はおっしゃいます。景気の急な悪化に備えるため、塗料を少しでも安く仕入れるために塗料販売を行う関連会社を設立するなど、さまざまな工夫をされているそうです。
今後の展望について早瀬社長は、
「会社は後継者の息子や社員に任せたいと考えています。今の仕事のやり方をそのまま続けていったのでは、将来必ず行き詰まる時が来るでしょう。そうならないためにも、社員たちには新たな分野に果敢にチャレンジしていってもらいたいというのが私の願いです。」 と次世代による会社の変革に大きな期待を寄せます。
おわりに
お話を伺う中で、技術をもったさまざまな世代の人材が集い、切磋琢磨しながら技術を磨き、誇りをもって作業にあたる社風がとても印象的でした。それは、プロのアート集団のようにも感じました。技術を育む社風が他社との差別化を可能とし、高い付加価値や社員への報酬による還元、社内の士気向上、業績の向上という好循環につながっているのだと思います。
工事業界では、しばしば人材不足や高齢化、高い離職率などが問題とされますが、そのような状況とは無縁の活気あふれる会社でした。
今後のますますの発展をお祈り申し上げます。
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