元気企業
2015年10月
株式会社アーバンアーキテック
培ってきた建築・不動産・介護事業のノウハウを活かし、『介護難民』ゼロを目指す
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代表取締役 川又 則夫 創業 平成21年 事業所 茨城県ひたちなか市勝田泉町4-17 事業内容 高齢者向け住宅建築・運営、介護ビジネスコンサルティング 電話番号 029-276-0660 URL http://urbanarchitech.com/
株式会社アーバンアーキテックは、ひたちなか市に本社を置き、サービス付高齢者向け住宅の建築や運営、介護ビジネスのコンサルティングを行う企業です。茨城県内のほか東京、埼玉、宮城など20ヶ所以上で、サービス付高齢者向け住宅「ご長寿くらぶ」を運営されています。
平成27年8月26日、ひたちなか市の本社と「ご長寿くらぶ東石川」を訪問し、川又則夫代表取締役にお話を伺いました。
創業の経緯
㈱アーバンアーキテックは、川又社長の実父が昭和29年に創業した関連会社の一般住宅建築部門を独立させる形で平成21年に設立したのがはじまりです。
川又社長は、学校卒業後2年間地元金融機関に勤務された後、後継者であった実兄がお亡くなりになったことに伴い昭和60年に関連会社に入社し、平成6年には関連会社の代表取締役に就任しました。関連会社では創業以来食用油やガスの販売を行っていましたが、川又社長の代表取締役就任後、時代の変遷とともに、不動産賃貸・販売業や一般住宅建築業などへ進出し多角化を進めていったそうです。
その後、平成21年に一般住宅部門を独立させ㈱アーバンアーキテックを設立。川又社長が代表取締役に就任し現在に至ります。
ひたちなか市の本社の様子
業態の転換
平成21年に当社を設立して間もなく、大きな転機が訪れます。
リーマンショックが住宅市況を直撃し、一般住宅建築の売上が急減したのです。
またその頃、実母の介護を経験されていた川又社長は、介護施設探しの大変さを身を持って経験されました。安価な特別養護老人ホームを希望しても数年間は待たされ、有料老人ホームは入居費が高価で普通の年金生活者では入居できないなど、介護を必要とされる方が施設不足によって必要なサービスを受けられない現状を目の当たりにしたのです。
そこで川又社長は、独学で介護制度の仕組みなどを勉強し、サービス付高齢者向け住宅(旧称:高齢者専用賃貸住宅)の建築と運営に進出することを決意します。
サービス付高齢者向け住宅は、高額な入居費用が発生せず、賃料も安価なため、介護を必要とする年金生活のお年寄りが安心して暮らし続けられる利点があります。
「関連会社の持つ不動産賃貸業のノウハウ、当社の持つ一般建築工事業のノウハウ、そして新たに得た介護制度の知識を組み合わせ、新たなサービスを提供し、介護問題の解消に貢献しようと考えました」
そうおっしゃる川又社長が考えられたビジネスモデルは、次のようなものです。
- 土地の活用を希望する地主を募り、施設が不足している東京、埼玉、茨城などの首都圏近郊に地主の費用負担でサービス付高齢者向け住宅をローコストで建築する。
- 建築した施設は当社または医療法人、介護事業者が一括で借り上げを行い、地主に長期間安定した賃料を保証した上で、施設の運営は当社または医療法人等の事業者が行う。
- 施設の運営主体が医療法人や介護事業者の場合は、単に施設を建築するだけでなく、入居者の募集や運営コンサルティングまでワンストップでサポートを行う。
- ローコストで建築することで、年金で生活する高齢者が安心して入居し続けられる家賃設定を可能とし、地主や投資家の投資額も抑えることで投資を呼び込む。
ご長寿くらぶ東石川(外観)
明るい廊下には入居者の作品などが飾られている
設備の整った浴室
「ローコストとは、安かろう悪かろうということではありません。華美な設備や過剰なサービスは省き、施設の快適さは損なわず、入居者側にも、地主や投資家側にも過度な費用負担がかからないようにすることです。」
と川又社長はおっしゃいます。
当日取材に伺った「ご長寿くらぶ東石川」では、明るく広い廊下や水周り、エレベーター、段差のない床面などのバリアフリー設計、スタッフの方々や入居されている方のあふれる笑顔がとっても印象的でした。
また、準耐火構造やスプリンクラー設備など、安全性を重視し、見えない部分にも配慮が行き届いていました。
事業を通じた社会問題の解決
必要とする介護サービスを受けられない“介護難民”は全国で52万人いるとされ、団塊の世代が後期高齢者となる近い将来では、問題はより深刻化するとされています。また、人口密集地域の都市部では施設建築用地が不足し、介護施設の不足がより深刻となっています。
社会問題を解決し、施設の建設速度を加速させるため、当社では300坪以下の狭小地でも建築可能な設計となっており、建築コストを抑えるために規格を統一化するなどの工夫を行っています。
そのような取り組みにより、現在当社では県内13ヶ所のほか、東京、埼玉、宮城に10か所、合計23ヶ所のサービス付高齢者向け住宅を運営するまでになっています。
また、近く千葉、栃木にも進出する予定で、今後も施設は増え続けていきます。
人材教育について
入居者・職員ともに笑顔の絶えない、
和気あいあいとした談話室
当社の社員は、パートを含め300人程にもなり、かなりの大人数です。川又社長は、業務が拡大する中で、人材の教育に一番苦心しているとおっしゃいます。
「介護施設は入居費用の安さで選ばれる時代ではありません。サービスの質が評価される時代です。そのため、運営するスタッフの人材教育が重要となってきます。そこで最も重要なのは、施設長の教育です。施設長の教育が行き届けば、その下の職員の教育も自ずと行き届いてきます。それは、入所者20名程度の小規模施設では、収支に直結してくる問題でもあるのです。」
そうおっしゃる川又社長は、これまでの施設運営のノウハウを体系的にまとめた業務マニュアルの整備を進め、今後のさらなる事業拡大に備えています。
創業からこれまでの歩みを振り返って
創業からこれまでの苦労について川又社長は、
「基本的に楽しみながら仕事をしているので、これまでの苦労は苦労とも思いません。ただ、事業を行う上では、お金儲けだけを考えて行っていると、必ず行き詰る時が来るものと考えています。事業を通じた社会問題の解決や社会貢献などの精神が大切なのだと思います。」
とおっしゃいます。
当社では、「いつの日か日本から“介護難民”をなくしたい!」をスローガンに、全社一丸となって社会問題の解決や社会貢献に取り組んでいます。
おわりに
日本には、「売り手よし、買い手よし、世間よし」という商人の古くからの思想哲学がありますが、そのような誰もが満足を得られる川又社長が考え出したビジネスモデルが大変印象的でした。
当社が提供するサービスは、地主や投資家、事業者、入所者、社員、地域社会など、誰もが大きな満足を得られるものです。
それは、不動産業や建築業、介護事業など、自社が手がける事業の特徴や強み、ノウハウを最大限生かして組み合わせなければ実現し得なかったものだと思います。
川又社長は、関連会社も含め、時代の変遷に合わせて幾度かの業態転換を行っています。そのように、柔軟な発想でたえず激変する社会のニーズに対応していくことは、企業の永続的な発展につながっていくことなのかもしれません。
川又社長は、
「社会貢献をしながら関東近県で業界NO.1になることが当面の目標です。」
と最後に熱い想いを語ってくださいました。
今後のますますの発展をお祈り申し上げます。
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