元気企業
2015年08月
株式会社UMASO
地域の発展とお客様の幸せのため、こだわりのお菓子作りを続ける
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代表取締役社長 望月 京子 創業 平成22年 (法人設立 平成27年1月28日) 事業所 日立市本宮町4丁目1-10 事業内容 洋菓子製造・小売 電話番号 050-8007-8623 URL http://umaso.co.jp
株式会社UMASOは、日立市で洋菓子店「パティスリーましぇり」を運営する企業です。日立地域ブランドの認定を取得した『四季バラロール』、郵便局のふるさと小包便に採用された『円満かすていら』などを主力商品に、多数のケーキや焼き菓子等を製造・販売しています。7月11日には、日立市かみあい町にあった旧店舗から移転し、リニューアルオープンしました。
平成27年7月9日、オープン前の新店舗を訪問し、望月京子代表取締役にお話を伺いました。
『お菓子で幸せづくり』をめざして
数日後にリニューアルオープンを控えた新店舗では、カラフルなケーキやたくさんの焼き菓子が並び始め、着々と準備が進められていました。
「当店では常に10種類以上の生ケーキや多数の焼き菓子を用意しています。マネージャーを務める長男と話し合い、新しい店舗は『お菓子のテーマパーク』を目指して店作りを行っています。」
そうおっしゃる望月社長は、『お菓子で幸せづくり』をコンセプトに経営を行ってきました。
茨城のブランド卵・奥久慈卵などこだわりの材料を使った「円満かすていら」は、その商品名通り、お客様の『円満』を願って作られた丸い形のカステラです。郵便局の地元特産品PR企画・ふるさと小包便に採用されたこの商品は、地域の郵便局の支援を受け、期間中には3000個を販売。関東地区5県の各郵便局に配布された関東特産品カタログにエントリーの約20社の中で、成績2位を獲得するほどの人気商品です。
また、当店の人気商品「四季バラロール」は、茨城を盛り上げたい、地域のために何かしたいという想いから、県の花であるバラを食用に改良し材料に用いたロールケーキです。使用している茨城県産の食用バラは、友人に協力を仰ぎ、専用に開発しました。開発の過程では、補助金制度を活用し、県職員、商品企画を指導してくれた六次産業セミナー関係者、バラの生産者などを含め、多くの方に助けてもらったからこそできた商品だと望月社長はいいます。その熱意が伝わり、平成25年に日立地域ブランドの認定を取得しました。
そのほかにも、一つ一つ外袋に手描きで顔を描いたクマの形のマドレーヌ「くまドレーヌ」など、お客様に笑顔になって欲しいという心遣いが随所にあふれています。
7月11日オープンの新店舗(左)と、自宅を改装した移転前の店舗(右)。
創業の経緯
望月社長のお菓子作りは、当初子ども達に手作りの愛情やぬくもりを伝えたいとの思いから始めたのが原点です。何事もとことん突き詰める望月社長は、平成11年から本格的に料理研究家のもとに入門し、3年後には自宅でお菓子教室を開講するまでになりました。
ご主人が突然亡くなったのは、そんな中でのことです。
喪失感からしばらくは呆然としていましたが、ご主人は家で仕事について一切語ることはなかったため、生前技術者だったご主人の職場を会社の方に頼み込んでご子息と一緒に見せてもらうことにしたそうです。そこで、ご主人が社会の安全に貢献する、世界中から求められる自動車技術の開発を成し遂げていたということを初めて知ったそうです。
「お前にはもっと社会のためにできることがあるはずだ、というようなことを夫に言われたことがあります。当時誇れるものがなかった私には悔しい思いしか残りませんでしたが、夫がやり遂げた『夫にしかできない』仕事の跡を見て、心からその生き方を尊敬し、感銘を受けました。」
望月社長は、人を感動させ突き動かすには言葉ではなく行動で示さなければいけないということを実感し、二人のご子息のため、生きたくても叶わなかったご主人の分まで頑張らなくてはいけないと奮起。平成22年に自宅を改装し、洋菓子店「パティスリーましぇり」を開店しました。
移転前の店舗は高台にある団地の中で駐車場もないという商業には不向きな立地にもかかわらず、お客様の口コミから順調に売り上げを伸ばし、平成27年1月の法人化を経て、同年7月11日に、新店舗への移転・リニューアルオープンに至りました。
リニューアルした店舗内
『本物志向』のこだわり
望月社長は、パウンドケーキに使うフルーツ漬けを2年かけて自作し、それを使う際は漬かり具合によってその他の材料も細かく調整したり、ブラウニー(チョコレートの焼菓子)に使う特別な黒糖をフランスから輸入したりと、材料も手間も惜しむことなくお菓子づくりを行っています。また、地元の酒造の酒粕を使ったケーキの開発など、地域の商品開発にも労を惜しみません。
望月社長は、夫の生き方だけでなく、両親の教えや育ってきた環境にも影響されているとおっしゃいます。
「和裁士だった母や祖父のほか、大工、料理人などの職人が身内にいる中で育ち、母からは『何か一つ一生をかけたものを見つけなさい』『世間様が想定している以上の圧倒するような仕事をして、アッと言わせなさい』と教わってきました。いい加減な仕事をしたら信用を失いますし、よそでできることは自分がやっても仕方がない。納得がいくまでこだわりぬく『本物志向』の姿勢や、自分にしかできないことを妥協せずにやるという意識は、知らぬ間に染み付いていたのだと思います。」
と望月社長はおっしゃいます。
『お菓子で幸せづくり』のコンセプトのもと、
材料も手間も惜しまず、妥協することなくお菓子づくりを行う。
恩返しのために
「四季バラロールや円満かすていらの開発・販売はもちろん、創業から今まで、本当にたくさんの方々に支えていただきました。私自身がステップアップすることで『助けてあげてよかった』と思ってくれること、それが支えてくれた方たちへの恩返しにつながると考えたからこそ頑張ってこられたのだと思います」
望月社長はそう振り返ります。
創業に向け、望月社長は世界的に有名なシェフに師事しました。それが叶ったのも知人の紹介のおかげでした。そのシェフも、3年という長期にわたって指導のために日立まで通ってくれたそうです。
また家族の協力も大きく、リニューアルオープンに際して、長男は慣れない経営の知識を学び、都内の会社を辞めて戻ってきてくれました。また次男は現在ウェブ関連の仕事をしていますが、いずれは何らかの形でその経験を店のために生かしたいといってくれているそうです。
「生意気だと思われるかもしれませんが、ここまで育ててもらったからには、スイーツ文化を提案し、地域の発展に貢献するくらいのことをしなくては罰が当たります。そのためにも、茨城県産食用バラを使ったロールケーキなど、当店のお菓子をきっかけにして、地域を盛り上げることができたらと考えています。」
そのような確固たる情熱を持った望月社長も、くじけそうになったことがあります。
あるショッピングモールのバイヤーから声がかかり、期間限定で出店することになった際のことです。たくさんのケーキを携えて意気揚々と出店したものの、結果は惨敗でした。
「スタッフも私自身も泣くほど悔しい思いをしました。どんなに素材や製法にこだわり、想いを込めて作っても、それが伝わらなければ意味がないということがよく分かりました。」
そのとき、込めた想いや情熱を分かってもらうためにも、しっかりした店構えで経営を行い、信用を得ていくことが必要だと痛感し、それが今回の新店舗への移転のきっかけになりました。
左から『四季バラロール』、『日立さくらロール』、『円満かすていら』。
様々な人の協力により販売が叶った。
おわりに
望月社長はその情熱の一方、地域に漂う雰囲気に歯がゆい思いもしてきました。景気の影響から地域経済が停滞したときも、『自分が地域を盛り上げよう』という熱意があまり感じられず、みんながもう少し頑張ったら地域を活性化できるはずなのに、ともどかしく思っていたそうです。
「私自身の生まれは県外ですが、縁があったこの土地のため、みんなで盛り上げていきたい、そのためにも一石を投じたいという気持ちが強くあります。自分ひとりで大きな石を投じることは難しいですが、小さくても光るものを投げ続けることで、その積み重ねがいつか実を結び、誰かを動かすことができると信じています。」
その言葉どおり、自宅を改装したところからスタートした小さな洋菓子店は、多くの人を良い意味で巻き込みながら、お客様のため、地域のために成長を続けています。
取材中、望月社長は協力者の方々への感謝の言葉を何度も口にされていました。そういった方々が手助けしてくれたのは、望月社長が困難を乗り越えようと前向きに頑張り続けたことや、どこまでも妥協せずお菓子づくりに取り組む姿勢が共感を集め、信頼されたからこそだと思います。
今後のますますのご発展をお祈り申し上げます。
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