元気企業
2015年06月
有限会社アサヒ製作所
品質・コスト・納期など、あらゆる顧客ニーズを満たす優れた金属製品を生み出す
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代表取締役 宇野 茂生 創業 昭和54年3月 事業所 猿島郡境町198-15(本社)
猿島郡境町伏木1274-1(境工場)
坂東市逆井1212-1(工場)事業内容 精密板金、プレス加工一式、ユニット・筺体組立(ATM等金融機関向け機器、コインパーキング用装置、歯科診療ユニット等) 電話番号 0280-23-3557(境工場)
有限会社アサヒ製作所は、境町に本社と境工場、板東市に猿島工場を構え、板金・プレス・溶接等の金属加工を行う会社です。主にATM等の金融機関向け機器、コインパーキング用装置、歯科診療ユニット等に用いる内部部品等を製造しています。
平成27年4月24日、境町の境工場を訪問し、宇野茂生代表取締役と、ご子息であり後継者である宇野浩史工場長にお話を伺いました。
当社のあゆみ
宇野社長は、27歳まで神奈川県川崎市でお父様の経営する会社に勤めていらっしゃいました。お父様が亡くなった後はお兄様が事業を引き継ぎ、宇野社長は昭和54年に独立。境町の現本社所在地で、宇野製作所という名で個人事業を立ち上げました。創業当時は、8坪のプレハブ工場から奥様と夫婦二人三脚での船出だったそうです。
昭和61年、当社は有限会社アサヒ製作所として法人化。平成3年に旧猿島町逆井(現板東市)に猿島工場、平成24年には境町伏木に敷地面積2,400坪の境工場を新設するなど、順調に業容を拡大してきました。
現在は、ATM・硬貨包装機・紙幣整理機等の金融機関向け機器を中心に、毎月1,000台の発注があるコインパーキングのフラップ(車輌下の車止め装置)や精算機、歯科診療ユニット(診療用の椅子と治療器具)の部品や筐体など、様々な金属製品の加工を大手のメーカーから請け負っています。
取引拡大の軌跡
境工場の社屋
創業当初、当社の取引先は金融機関向け機器のメーカー1社のみでした。その取引も親族の仲介によるものでしたが、数年かけて着実に実績を積み上げることで、直に注文を受けられるようになったそうです。しかし、1社に売上のほとんどを依存する経営体制では景気変動の波を大きく受け、経営の安定には程遠い状況でした。
宇野社長は、
「取引先を広げ、売上の柱を複数に増やすことに腐心してきました。1つの大手企業に何度断られても諦めずに電話をかけ続け、500回電話してようやく取引に結びついたこともあります。」
とおっしゃいます。
そのような粘り強い営業や、ひとつひとつの仕事を大切にする経営姿勢から、今では複数の大手企業との多種多様な製品の直接取引を行うまでになっています。それは景気の波の変動を受けにくくすることにもつながり、安定した経営の実現に寄与しています。
『お客様あっての仕事』
社長も工場長も、品質・コスト・納期の全てにおいて、顧客の要望を満たすことを非常に大切にされています。
特に品質に関して、ATMをはじめとする当社が関与している製品は、日常生活でも身近で使用頻度が高いものが中心です。それは同時に、金額の計算に誤りが出るような不具合や、金属の断面で手を切るような危険性は許されない、精密さと安全性が求められる製品でもあります。そのため、0.1mm以下に誤差を抑えたり、品質に影響を与えないぎりぎりの範囲で研磨を行い安全性を確保したりと、細かい調整を行う必要があります。
「お客様あっての仕事ですから、相手との信頼関係を築く上で、どれだけ要望に応えられるかは大変重要なことです。それは、安全性などの目に見えない潜在的な要望も同様です。お客様から注文を頂いたときは、現場の従業員と協力し、チームプレーで幾度も検討を重ねながら品質確保と課題解決に努めています。」
と宇野工場長はおっしゃいます。
顧客と正面から向き合い、顧客の品質基準にも応え、コスト要求を満たし、納期を厳守するという一つ一つの信頼の積み重ねにより、複数の大手メーカーとの安定的・継続的な取引が可能になっているのです。
技術力と効率性の相乗効果
当社では、境工場の新設や24時間の自動運転を可能にする大型複合機の導入など、大規模な設備投資を進めてきました。このことは、生産量の増大のみならず、品質向上にも大きな役割を果たしています。
「以前は機械を動かすために人がついて補助作業を行う必要があり、夜間に機械を稼動させたい場合は、従業員が残業せざるを得ない状況でした。しかし、そこに人員を割く必要がなくなったことで、機械では不可能な細かい調整作業、技術を要する手作業に注力することができるようになりました。」
と社長はおっしゃいます。
できることは機械に任せて効率化を進める一方、人の手でしかできない作業に人的資源を集中することで、より高品質の製品を生み出すことに成功し、取引先からの信頼につなげています。また、新たな設備を目にした取引先から新しい部品製造の提案を受けるなど、注文の幅も大きく広がったそうです。
「もちろん、ただ新しい機械を使っていればよいというわけではありません。設備は非常に高価なものであるため、導入は慎重に行う必要があります。導入のタイミングや、投資に見合った効果が得られるか、長期的な視点で見極めることが経営者としての責任です。」
と宇野社長はおっしゃいます。
工作機械の効率と人の手による精密さを最大限に発揮し、高品質の製品を仕上げる
将来を担う人材の育成
「現在の課題は、当社のものづくりを支えている、人の手でしかできない技術を、いかに若手に伝承していくかということです。」
熟練の技術者たちが定年退職の時期を迎えていることもあり、宇野社長は、若手従業員の技術力向上に注力しているそうです。近年ではほぼ毎年2人ずつ、地元の学生を採用するなど、雇用の面から地域社会にも貢献しています。
また、従業員の増加に伴い、組織体制にも工夫を行ってきました。境工場では品質管理を含め5課という細かい部署分けがされており、それぞれにおかれた責任者を中心に、現場に大きな裁量権があります。それにより、何をすべきかを従業員が自主的に考え、行動できる人材が育成されているのです。
「以前は社長からの指示待ちの傾向がありました。現在は、通常の業務はもちろん問題が起きたときにも、まずは責任者を中心とした課員で課題に取り組み、解決を図ろうとする姿勢が見られるようになりました。」
と宇野社長はおっしゃいます。
当社では広い事務室で社長と従業員が机を並べて仕事をしており、社長室を設けていません。取材にうかがった際、宇野社長は従業員の方々と冗談を交えながら、垣根のない会話をされていらっしゃいました。こうした風通しの良さや社内全体の和やかな雰囲気も、従業員が自主的な判断や行動をとれる大きな要因だと感じました。
社長・従業員問わず活発なコミュニケーション
おわりに
当日取材で工場を拝見させていただいた中で驚いたのは、最新の大型機械の迫力とともに、熟練の職人の手作業でしかできない緻密な作業の多さです。
安定した取引先を複数確保して経営基盤を強化し、定期的に工作機械を設備投資できる環境を整え効率化を進め、軽減された労力を人の手でしかできないより緻密で付加価値の高いものづくりへ振り向けていく。そこには、ものづくりにおける好循環の理想的な姿がありました。
宇野社長は、過去に海外のものづくりを何度も視察し、海外へ進出することを何度も考えたことがあるそうです。しかし、最終的には日本でものづくりを続け、地域に雇用を生み、社会に貢献していく道を選んだそうです。
宇野社長はこれまでの苦労について、
「苦労したことはないです、苦労はすぐ忘れちゃいますので。」
と笑いながらおっしゃいます。しかし、わずか8坪のプレハブ工場から事業を始め、国内や海外企業との競争に勝ち抜き、会社をここまで成長させることができたのは、相当な覚悟とたゆまぬ努力があっての事だと思います。
当社の境工場は、広大な敷地のうち半分がまだ空いています。そこには、日本のものづくりにかける宇野社長や工場長、従業員の方々など、多くの方々の夢が溢れているような気がしました。
今後のますますの発展をお祈り申し上げます。
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