元気企業
2016年02月
株式会社いばらきのケア
事業活動を通じて地域の社会問題解消に貢献する
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代表取締役 石川 剛 創業 平成23年 事業所 常陸太田市木崎二町849(本社)
常陸太田市木崎一町1994(支店)
久慈郡大子町大字矢田323-6(支店)事業内容 通所介護・居宅介護支援・配食事業・放課後等デイサービス 電話番号 0294-72-2211 URL http://ibacare.com/
株式会社いばらきのケアは、常陸太田市内に本社と支店を構え、障がいを持つ児童を放課後等に一時的に預かり療育等のサービスを行う「放課後等デイサービス」、介護が必要なお年寄りを日中一時的に預かり介護サービスを行う「通所介護事業」、介護を必要とする方の介護プラン等を作成する「居宅介護支援事業」、お年寄り向けに弁当を宅配する「配食事業」を行っています。なお、「配食事業」に関しては大子町にも支店を構え、サービスを提供しています。
平成28年1月15日、常陸太田市内の本社を訪問し、石川剛代表取締役にお話を伺いました。
創業の経緯
常陸太田市内の本社
石川社長は学校卒業後、サラリーマンとしてしばらく働いていましたが、幼い頃から同居していて石川社長をかわいがってくれた祖母が介護状態になったのをきっかけに、祖母の力になれればと在宅介護について勉強し、医療・介護分野に興味を持つようになったそうです。
その後、平成16年に医療機関へ転職し、働きながら准看護師や正看護師、ケアマネージャーの資格を取得していきました。
充実した生活を送っていたある日、石川社長は 自身が担当した介護を必要とする患者さんが、病院を退院後に自宅でどのような食生活を送り、リハビリや介護を受けているのか、日々の忙しさの中で十分に見守れていないことに疑問を抱くようになりました。
石川社長は、介護や自宅療養を必要とする方一人ひとりとゆっくり向き合い、自宅での生活を見守り本人やその家族の不安を取り除きたいとの思いから、平成23年に勤務先を退職し常陸太田市で当社を設立しました。
地域のニーズとともに
創業した当初は、在宅介護のプラン作成を行う居宅介護支援事業だけを行っていた当社。業務の中で介護を必要とする方にいろいろな介護事業者を紹介していく中、看護師の資格をお持ちの石川社長の目線から、『自分ならこんなふうに介護するのに』と思うことが増えていったそうです。
「要介護度の高い方の受け入れは、介護に要する設備等の問題から地域内でも限界があり、困っている利用希望者やその家族を何とかしてあげたいと思ったのが参入のきっかけです。」
そう当時を振り返る石川社長は、平成24年に自ら通所介護事業に参入します。
当社では、要介護度が高い方でも安全に入浴ができるリフト等の介護設備を用意し、困っていた要介護度が高い利用希望者を受け入れられるようにしていきました。
平成25年にはお年寄り向けの配食サービスを開始します。
「一人暮らしのお年寄りは食品スーパーが遠くて買い物に行くことが難しかったり、病のために食事療法(カロリー・塩分制限やたんぱく質制限)が必要でも、自宅でそれに対応した食事を作り続けることが難しく、健康を害するケースが多いことに疑問を抱いていました。」
そうおっしゃる石川社長は、配食サービスと合わせて、常陸太田警察署や大子町役場とお年寄りの見守り活動で協定を結び、地域の安全・防犯にも貢献しています。
配食は手渡しと声かけを基本とし、行政のサービスが届きづらい過疎地でもサービスを提供しています。また、地域の医療機関と連携して食事療法が必要なお年寄りにも安心の食事を届けられるようにしています。そのほか、例えば配達の途中で過疎地域の道路等に異常があれば、すぐに行政に連絡するなど地域との連携を深めています。」
現在は常陸太田市と大子町で配食サービスを行っていますが、大子町の事業は茨城県の「起業支援型地域雇用創造事業」に採択され、平成26年3月まで助成を受けていました。人口減少や高齢化が進む県北地域において、雇用の創出にも貢献を行っているのです。
通所介護でタブレット端末の
利用方法を楽しく学ぶお年寄り配食サービスの盛り付け風景
介護・看護のプロとして大切にしていること
石川社長は、要介護度が高かったり、てんかんなどの持病のために医療の必要性が高く介護が難しい方でも、受け入れることをモットーとしているそうです。
「困っている利用希望者やその家族の要望にできる限り寄り添いたいとの思いから、持病などを理由に断ることは原則行っていません。もちろんリスクは伴いますが、社員と一緒に安全に受け入れられる方法をなんとか模索するようにしています。そのために看護師を4名在籍させており、投薬や定期的なたんの吸引などが必要な方にも対応できる安全体制を整えています。」
そうおっしゃる石川社長の言葉には、看護・介護のプロとしての誇りと情熱が溢れていました。
また、利用者の方にはとにかく楽しんでもらうことも心がけているそうです。そのため、季節に応じたイベントや遠出など、利用者の暮らしや人生を活き活きしたものにすることに社をあげて全力で取り組んでいます。
放課後等デイサービス事業の開始
3月にオープン予定の新店舗
当社では、平成26年10月に「放課後等デイサービス」を開始し、現在は常陸太田市内に2ヶ所の店舗を構えており、今年3月には3つめの店舗がオープンする予定です。
放課後等デイサービスとは、障がいのある児童(主に6歳から18歳)が生活能力などの向上のために、放課後や長期休暇中に通い、受けるサービスを指します。
平日はダンスやレクリエーションを行うほか、土曜日や長期休暇中は外出を行い、レストランで食事を楽しんだり、電車などの公共交通の利用の仕方を学んだりするなど、社会生活で必要な能力を養います。
「看護師として働いていたころ、障がいをもった子供達を家族が自宅で面倒を見られず、施設に入所している姿を見たことがあります。日中一時的に預かってくれる事業者が地域にあるだけで、家族は介護の負担が軽減され、結果的に子供達が自宅で暮らし続けることができるのです。私たちは、そのような地域資源を作っていきたいと考えています。」
と石川社長はおっしゃいます。
障がいと一言でいっても症状はさまざまで、自閉症や注意欠如・多動性障害、学習障害、身体障害、知的障害など、一人ひとりの症状に合わせた療育を施す必要があります。また、年齢や学年によっても求められるサービスが異なります。当社が店舗を3ヶ所に増やすのは、小学・中学・高校と卒業後の就職支援など、年齢や学年、一人ひとりの状況に対応した療育プログラムを行うためなのだそうです。
「現在、高校3年生の利用者がいますが、卒業後は基本的に放課後等デイサービスの利用はできません。利用者本人や家族達はその先のことを心配していますし、私たちもずっと見守っていかなければならないと考えています。」
今年3月にオープン予定の「多機能型生活支援センター」は、障がい者の就労等を支援する就労移行支援事業を行う機能を合わせ待った施設です。同施設では、18歳以上から65歳未満の障がい者が就職に必要な作業訓練やビジネスマナーの習得などを行い、社会に進出して自立するための拠点となる予定です。
料理を学ぶ子供達
公共交通機関の利用と外出活動
おわりに
「行政ができることには限界があり、行政サービスが届かない空白の部分を埋めるのが、地域の力だったり、私たちに課せられた使命だと思います。創業したころは、とにかく地域のニーズを把握し、地域の困りごとを解消するために自分に何ができるかを考え続けていました。それはとても孤独で、事業として成り立っていくのか不安も大きかったです。」
と石川社長はおっしゃいます。しかし、当社は創業から4年ほどとまだ日が浅いにも関わらず、石川社長と志を共にする35名もの社員を抱えるまでに会社は成長を遂げています。
今後の目標について石川社長は、
「会社を大きくすることにはあまり興味がありません。地域のニーズに合わせて事業を行っていく中で、結果的に会社が大きくなっていたというのが私の理想です。」
とおっしゃいます。
取材を通じて石川社長からお話を伺う中で、ご自身の資格や経験を組み合わせて、地域に対してどのようなサービスを提供して貢献を行っていくのかを考え抜き、事業活動を通じて多くの社会問題を解決しながら会社の成長につなげている経営手法が大変印象的でした。
石川社長からいただいた名刺には、「動けばなにかが変わる!!」という熱いメッセージが記されています。高齢化や人口減少、介護問題などは、しばしば暗い話題として取り上げられることが多いですが、志があれば地域をより良いものに変えていくことができ、地方には明るい未来があるということを教えていただきました。これこそが地方創生の理想的な形なのかもしれません。
今後のますますの事業の発展をお祈り申し上げます。
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