茨城県信用保証協会

元気企業

2016年02月

有限会社皆川獣医科医院

命を預かる獣医師として、全国有数の設備と高い医療技術による手厚い獣医療に尽力

代表取締役 皆川 武久
創業 昭和54年
事業所 高萩市大字高戸462-2(本社)
高萩市下手綱2256-1(アイ動物医療センター高萩)
つくば市学園の森2-20-5(アイ動物医療センターつくば)
事業内容 動物病院、ペットサロン、ペットホテル
電話番号 0293-24-3535(アイ動物医療センター高萩)
URL http://www.aitom.jp/

 有限会社皆川獣医科医院は、高萩市に本社をおき、高萩市内のほか日立・水戸・つくば、関連会社経営の土浦・埼玉県川口市と、計6箇所の動物病院を経営しています。また、高萩とつくばの病院は、充実した設備で重症例も受け入れられる総合動物病院としても機能しています。
 平成28年2月4日、つくば市の「アイ動物医療センターつくば」を訪問し、皆川武久代表取締役と、皆川浩之専務取締役にお話を伺いました。

創業の経緯

東京都出身の皆川社長は、大学の獣医学科を卒業後、アメリカやオーストラリアなどの海外、北海道などで獣医師として勤務されていました。そこでは、臨床以外にも、主に技術者として他の獣医師の指導や、受精卵移植などに関する研究を行っていたそうです。

結婚を機に高萩に移住された皆川社長は、当初は牛馬等の大型動物の診療を行っていました。獣医師としての評判が徐々に広まるにつれて次第に犬猫等の診療も依頼されるようになったことで、昭和54年、「皆川動物病院」を開院されました。

その後は順調に顧客を増やし、昭和59年に法人化。現在では高萩市内やつくば市など県内5箇所、埼玉県で1箇所と、関連会社経営を含め県内外にグループ病院を展開しています。

  • 昨年開設されたつくば市の病院(外観と受付)

全国有数の診療体制

  • MRI、CT、病理診断用の機器など、全国でも有数の高度医療機器を備えている。

皆川社長は、開業当時を振り返って、
「高萩での開業にあたり、欧米ではごく一般的だったレントゲン等の設備を取り入れたのですが、周囲には大変驚かれました。当時はまだ動物病院の数そのものが少なく、また人間の医療で当たり前の設備でも獣医療への導入はほとんどなかったのです。ペットの治療や動物の命に対する意識に、海外との大きな差を感じました。」
とおっしゃいます。

日本でも、人間に負けない手厚い獣医療を提供したいと考えた皆川社長は、「アイ動物医療センター高萩」と改名した高萩の病院や、平成27年に新しく開設したつくば市の「アイ動物医療センターつくば」に、MRIやCT、病理診断のための各種機器をはじめとするさまざまな高度医療機器を導入し、診察や手術に活用してきました。MRIまで備わった動物病院は、県内にはほかにありません。

さらに、プールや水中トレッドミル(ランニングマシン)も設置し、理学療法士の指導のもとリハビリテーションやフィットネスも行い、術後のリハビリや予防医学にも努めています。

このように、北関東一と称される高度医療機器や充実したリハビリ施設等の体制を備え県内のその他のグループ病院や他院で対応できない難しい症例の患者を受け入れており、茨城県内から福島・栃木県域まで含めた広域で、中核的動物病院として機能しています。

  • プールと水中トレッドミル。理学療法士の指導のもと、リハビリやフィットネスを行う。

獣医師の育成と人材の確保

これらの充実した設備を土台とし、治療の難しい二次診療を支えているのは、30名ほどの獣医師の皆様です。当社では、腫瘍外科・神経外科・眼科手術等の専門的な手術もこなす優秀な獣医師の育成にも力を注いできました。

新人獣医師の育成にあたっては、まず場数を踏んでもらい、現場で学んでもらおうというのが皆川社長の方針です。

獣医師の業界では、病院規模が小さくて指導に人員を割けない等の理由から、新人はしばらく本格的な治療には関われないことも多いそうです。当社は難しい症例が多い分、チームで治療に取り組んでおり、新人獣医師はその一員として指導を受けながら経験を積んでいくことができるため、2~3年程度という異例の短期間で手術をこなせるようになります。

また、専門的な分野については外部のセミナーを活用するなど、積極的にスキル向上を支援しています。

一方、特に茨城県北地区では、立地がネックとなってなかなか獣医師の確保につながらないという問題もあります。全国的にも大学の獣医学科の新卒者は毎年1,000人程度、その中でも首都圏等都市部以外で臨床に携わろうという学生は100名程度と少なく、またUターンが見込める県内出身者もごく少数です。限られた人材の奪い合いとなっている中、今後は、人材難をどう解消していくかが課題なのだそうです。

獣医師としてのあり方

信頼される獣医師に

知識や技術の習得を支援するかたわら、皆川社長は次のようにもおっしゃいます。

「獣医師はどうしても治療のための技術向上に目が行きがちですが、言葉遣いのような基礎的な一般常識も大切な要素です。飼い主の方はペットを『うちの子』と呼び、我が子のように可愛がっています。信頼できない相手に、そのような大切な家族を預けることはできません。治療方針を説明し、納得してもらう過程で、誤解や不信が生じてはならないのです。」

獣医師は、学校卒業後すぐ『先生』と呼ばれて頼られる職種です。だからこそおごることなく、しっかりとした社会常識も兼ね備え、信頼できる獣医師になってほしいという想いから、新人教育においてマナー・常識に関する研修なども取り入れていく予定です。

また、飼い主との信頼関係に関しては、『敷居の低さ』という点も心がけています。日常から健康診断などで顔を合わせ、気になることがあれば気軽に相談してもらえる状態であれば、何か異変が起きたときにも早期に発見し、治療に取り組めるためです。当社ではワクチン接種などの割引を行う会員制も取り入れており、頻繁かつ継続的に獣医師がペットの様子を見る事ができ、また飼い主ともコミュニケーションを密に取れるような仕組みを作っているそうです。

地域とともに発展を

茨城県は人口あたりの動物病院数が全国4位と、非常に競争の激しい地域ですが、飼い主同士の口コミや他院からの紹介等により、当社の患者は増加してきました。このように当社が成長を遂げられたのは、大きく二つの理由があります。

一点目は、高度医療という分野で他院との差別化がはかれたことです。

環境や餌の変化により、ペットも昔より10年以上長寿化した今、人間と同様に中高年特有の病気(がん、白内障、緑内障、糖尿など)も増加傾向にあります。

「重い症例は専門の設備を持つ病院でなければ対応できず、そのような大きな病院は、首都圏や関西等の都市部に集中しています。高度な診療を行える病院が高萩とつくばにあることで、県内や福島・栃木などの飼い主の方々は、首都圏までわざわざ出るような大きな負担なく、通院することができるのです。」
と皆川社長はおっしゃいます。

二点目は、激しい競争環境にありつつも、周辺の個人病院からの信頼が厚く、紹介による患者が多いということです。個人の病院では対応できない病や特殊な症例など、二次診療として紹介を受けて治療を行っています。

治療後には診断書や画像診断等全てを渡していることから、予防接種・不妊手術など一般的な一次診療については近所のかかりつけ獣医、難しい病気は当社という住みわけもでき、自然と良好な関係が築かれています。

「当社でも様々な症例の集積ができる等のメリットがあります。このようなWIN-WINの関係を保ち、協力し合いながら、周囲の病院とともに発展していけるのが理想のかたちです。」
と皆川社長はおっしゃいます。

  • 紹介を受けた難しい手術にもチームで取り組む。

おわりに

動物やペットを取り巻く現状について、皆川社長は、動物病院の設備や治療の手厚さが欧米と異なるのは、日本ではまだ動物の命に対する意識やペットに関する文化レベルが欧米並みの水準に到っていないためではないかとおっしゃいます。

ペットを大切な家族の一員としてとらえる人がいる一方、たかが意思のない動物と考え、飼えなくなったからと安易に捨てる飼い主、きちんと不妊手術を行わない無責任な飼い主などがいることは事実です。また、特に茨城県は、引き取り手のない犬猫の殺処分数が全国ワーストクラスという状態が長らく続いており、動物にかかわる者としては見過ごせない状況にあるそうです。

「国内外を問わず、殺処分を一切行わない国や地域もあります。我々には、動物の命に対する意識の変革、そしてペット文化の底上げが求められているのではないでしょうか。このような地域において、我々が手厚い獣医療を提供し続けるということには、動物の命を人間と同等に大切なものとして啓蒙していくという意味があるのだと思います。」
と皆川社長は熱く語ります。

充実した設備や高い技術を持った人材など、獣医療においてできる限りの力を尽くそうという真摯な姿勢は、このような、命を扱う獣医師としての使命感から生まれるものです。そしてその姿勢こそが、大切なペットを預ける飼い主や、周囲の動物病院などの信頼につながっているのだと思います。

今後のますますの発展をお祈り申し上げます。

  

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