茨城県信用保証協会

元気企業

2016年04月

沢井工業株式会社

代表取締役 沢井 和雄
創業 昭和23年
事業所 東茨城郡茨城町若宮264(本社・工場)
事業内容 印刷機械部品、油圧ダンパー部品、プラスチック成型機部品他製造業
電話番号 029-293-7017
URL http://www.sawaikk.com/

 沢井工業株式会社は東茨城郡茨城町に本社・工場を構え、印刷機械や油圧ダンパー、プラスチック成型機械、プラント等に使用される金属部品の精密加工を行っている会社です。
 平成28年3月15日、茨城町の本社・工場を訪問し、沢井和雄代表取締役社長と当社の後継者である沢井勉生産管理部長にお話を伺いました。

創業の経緯

茨城町の本社・工場

 当社のあゆみは、昭和23年に沢井社長のお父様が東京品川で創業された各種機械部品の切削加工を行う有限会社沢井製作所からはじまります。当時は、発電所のプラント等で用いられる油圧防振装置の部品などを生産していました。
 昭和41年に事業拡大とともに生産拠点を茨城町に移転して関連会社として当社を設立しましたが、昭和51年のオイルショック当時に合理化の一環で両社の経営を統合し、本社および生産機能を茨城町に集約し現在に至ります。
 社長は、昭和49年に当社に入社し、平成7年に代表取締役社長に就任、現在に至ります。

経営危機から生まれた当社の強み

 当社の強みは、マシニングセンター、NC旋盤、NCフライス盤等を用いた複雑な金属加工と熟練作業員の手作業を融合し、製品の精度を極限まで高め、機械加工だけでは実現できない超高精度の金属加工を行えることです。
 特に、印刷機械に用いられる長物加工に強みをもち、加工の際に生じる金属のソリを0.02ミリ以下に抑えることを可能としています。その高い精度から、当社の部品は国立印刷局に納められる印刷機械にも使用され、日本の紙幣発行を陰で支えています。
「我が社の現在の生産体制は、オイルショックで受注の大半を一時的に失ったことが転機となり、確立されたものです。それまでは手作業中心の金属加工でしたが、生産性が低く、その割に精度もそれほど高くないという問題を抱えていました。」
社長は当時を振り返ります。そこで先代の社長は経営危機の中にもかかわらず、大胆な設備投資を行い、複雑な金属加工を可能とするマシニングセンターを購入したそうです。
「機械は手形で購入したため、手形の決済に追われる厳しい経営がしばらく続きました。しかし、機械を導入することで生産性を向上させ損益分岐点を下げ、人的資源をより高度な加工作業に振り向けることで付加価値を高め、競合他社や海外企業との競争に勝つという先代の戦略は正しかったと思います。」
社長はおっしゃいます。
このような経営戦略は、社長にも受け継がれています。
 当社は5年ほど前に、主力としている印刷機械の部品加工を海外企業に奪われるという危機に再び見舞われたことがあったそうです。しかし、海外企業の製品は不良品率5割で要求される精度を満たすことができなかったため、受注は当社にすぐに戻ってきたそうです。
「一時的に仕事を取られても、すぐに戻ってくるという自信がありました。海外企業は一時的に取引先から与えられた図面どおりに製造することはできますが、その水準を保ちながら安定的に製品を作り続けることができないのです。」
社長は力を込めます。金属のソリの補正、バリ取りなどの手作業は図面には表れない部分で、多くの手作業の工程を経なければ高精度は実現できないものなのです。
 当社では、取引先から100分の5の精度を要求されたら、常にその上の100分の3以内の精度に収める事を目標にして作業にあたることを心がけているそうです。その高い意識の共有は、不良品の発生率を大幅に低減することにもつながっています。
  • 万力で長物のソリを極限まで補正する作業
    熟練作業員の経験と勘でしかできない工程

  • 付加価値を高めるため部品の組立作業
    繊細な作業で女性も多く活躍している


次世代の育成

 社長は、次世代の育成に今最も力を入れています。
後継者の沢井生産管理部長は、当社の主力取引先で長年修行をし、大手企業の生産管理や品質管理などのノウハウを学び、当社に入社しました。
 部長の入社後は、納期・品質のさらなる向上に努めるためにISO9001認証を取得、付加価値の高い1点物の設計に対応するためにCADを取り入れたり、若い職員や女性も働きやすい環境を整えるために事務所やトイレの環境整備を進めるなど、若い感性を生かして社長とともに会社の改革を進めています。
「若い人を信頼して勇気をもってどんどん任せる。それが任せられた人のやる気や責任感、意識の向上につながり、会社が活性化していくのです。我が社の社員は皆まじめで一生懸命な者が多く、指示をしなくてもあれをやりたい、これをやりたいと自然と声が上がります。」
社長は目を細めます。

若者や女性が活躍できる職場

 当社では入社5年目くらいの若手社員に1台数千万円もする高価な工作機械を任せ、その機械の持つ癖や図面には表れない生産工程上の勘所を徹底して体で覚えてもらうそうです。はじめは失敗が続き、精神的に追い込まれる部分もありますが、そこはベテラン社員がサポートして、乗り越えていきます。
 また、社長は、企業活動を通じて得た利益を社員に還元することをモットーとしています。有給休暇制度や賞与の支給、社宅の提供など、社員の安定した生活や労働環境の整備などにはとても気を遣っているそうです。
 「会社を私物化して自分だけ儲かればいいという考えでは経営はできません。会社は、社員のために存在するものでもあるのです。利益を適正に社員に還元し、士気を高めていくことは、会社の永続のために大切なことです。」
と社長はおっしゃいます。

今後の課題と展望

最近導入された最新鋭の工作機械

 社長は今後の課題について、
 「国内外の競合他社との競争は、今後ますます熾烈を極めていくでしょう。為替の大きな変動も考えられ、価格競争力が急激に削がれることも考えられます。そのような事態に備えて、生産性をさらに向上させ損益分岐点を下げ、高付加価値をつけていくための投資が不可欠です。これからも工作機械等の設備投資を進め、次世代に安定した経営状態の会社を引き継いでいける体制を整えていくことが今の課題です。」
とおっしゃいます。
 一方、生産を統括する後継者の生産管理部長は、
「生産管理システムの導入により工作機械の最適な稼動を実現し、最終的に生産性を現在より20%向上させることが目標です。生産性の向上で生まれる生産余力は、新規取引先から持ち込まれる高付加価値の1点物の金属部品の生産に充て、販路拡大と取引先の分散につなげていく予定です。」
とおっしゃいます。
 お二人は、これからも手を合わせて課題の克服と会社のさらなる飛躍に向けてあゆみ続けます。

おわりに

 お話を伺う中で、社長の積極的な設備投資や、安定した事業承継に向けた取り組みの数々がとても印象的でした。
 今は不安定で先の見えづらい時代ですが、ただ守りに徹するのではなく、そのような中でも勇気をもって投資判断を行い、会社や社員の将来を守るために競争力強化の先手を打つ設備投資を行っていくことの大切さを教えていただきました。
 また、最近は後継者不足でやむなく休廃業を選択する会社が多いと新聞等で報じられていますが、そのような状況とは無縁の、活気ある会社の姿が印象的でした。
 社長は取材中、何度も「社員のために」「若い者のために」「将来のために」などと繰り返されていました。そのような、誰かを思い将来を見据えて前向きに経営に取り組まれる経営姿勢が、会社の永続的な発展につながっているのだと思います。
 今後のますますの発展をお祈り申し上げます。
  

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