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木内製菓株式会社

最新の設備と正直な経営が支える「安心・安全」な伝統和菓子づくり

 

最新の設備を整えた老舗和菓子メーカー

 

 

 木内製菓㈱の歴史は、明治末期頃に木内政和社長の曾祖父が、いわゆる"お饅頭屋さん"として製造・小売を開業したことに始まります。その後、父の代にスーパーに販路を拡げ、製造・卸売業者として事業を拡大。4代目に当たる木内政和社長が代表者になり、昭和56年に法人を設立しました。現在は神栖市息栖に本社兼工場を所有しており、パート社員を含めた従業員数は約130人、平成20年8月期の年商は約15憶を計上するまでに成長しています。

 

 

 

 同社は平成13年に、HACCP対応型の工場を建設したのを境に飛躍的な成長を遂げています。多大な資金を投じ、最新鋭の衛生管理設備を整えた背景には、木内社長が抱えた次のような危機感がありました。
 ※「HACCP」
  米国で宇宙食の安全性を確保するために開発された食品の衛生管理の手法。

 

「平成12年に食品業界を大きく揺るがした、いわゆる"雪印事件"がありました。あの事件以降、消費者の食品に対する『安心・安全』への関心が高まったことは記憶に新しいと思います。当時、弊社もそれなりの設備を整え、衛生管理には一定の配慮をしておりましたが、先進的な設備をいち早く導入している他社の視察などを通じ、これからの食品業界では、より厳格な衛生管理体制を整えた企業でなければ生き残れないという強い危機感を抱くようになりました。」

 

 しかし、当時は多額の投資を行うことに対しては慎重な声も多く、周囲の理解を得るのには苦労したそうですが、その甲斐あって新工場建設後は、大手スーパーから商談があるなど販路の拡大につながり、同社が新たなステージへと飛躍する大きな一歩となりました。

 

 

“商品力”こそ最大の武器

 

 

  菓子製造卸売業界は、小売店側の力が強いため、製造業者側はその動向に左右されやすいという特性があります。そのため、ここ十数年間で、スーパー業界で、統廃合や系列化が進んだことに伴い、中小の製造メーカーの中には、その波にのまれ、業績が低迷してしまった企業も少なくありません。

 

「取引先の合併等により、吸収される企業と取引をしていた業者のシェアが減少したり、時にはゼロになってしまう一方で、吸収する企業についていた業者にとっては大きなチャンスとなります。特に中小企業にとっては、取引先がどれだけ力を持っているかが命運を握っているとも言えます。しかし、私は最終的にその企業が生き残れるかどうかは、"商品力"の差で決まる考えています。」

 

 取引先の動向など外部環境の影響力は大きいが、本当に“商品力”がある企業であれば、生き残りは可能だと語る木内社長。その"商品力"とはどのようなものなのでしょうか。

 ここで木内社長は、私たちに数枚の手紙を見せてくれました。そのうち1枚の手紙には、「たまたま"間に合わせ"のつもりで近所のスーパーで商品を購入し食べてみたが、予想以上に美味しく感動した、これからも頑張ってください」といった内容が記載されていました。その他も同社へ届いた“ファンレター”です。

 

「おそらく、手紙をくれたお客様は、それほど味に期待して商品を手にした訳ではないでしょう。弊社の商品がお客様に感動を与えた理由は、実際に食べた時の味と品質が、期待していたもの以上であったからだと思います。価格以上の満足感を与えることこそが、弊社の目指す"商品力"であり、このお客様のように商品の真の価値に気付いてくれる方がいる限り、私たちは嘘のない商品を作り続けていかなければならないのです。」

 

 木内社長は、このようなお客様の言葉は、何よりも仕事の励みになり「経営者冥利に尽きる」と嬉しそうに話していました。おそらく、手紙をくれた方は、その後も同社の商品を買い続けてくれる、根強いファンとなっていることでしょう。

 

 

限られた原価の中でより美味しいものを提供したい

 

 

 では、商品づくりにおいて、同社では特にどのような点に力を入れているのでしょうか。
 特売のチラシに象徴されるように、消費者にとってのスーパーの最大の魅力はその価格の安さにあります。確かに低価格だけを徹底して追求することも戦略のひとつかも知れませんが、同社はそうは考えていません。限られた価格設定の中で、できるだけ良い材料を使い、美味しくて、しかも安全な商品を提供したいという一心で努力をかさねてきました。


 例えば、和菓子作りに欠かせない饅頭やおはぎに使用する餡(あん)については、他社製のものを使用することでコストを下げることが可能となります。事実、餡の製造については外注しているメーカーも多く、同社でも一部の商品には他社製の餡を使用しています。しかし、小豆本来の風味を大切にしたいという木内社長の考えにより、同社では北海小豆を自社で仕入れ、炊き上げたものをできる限り使用しています。
 「そんなに違うものですか?」とたずねる私たちに、木内社長は2種類の餡の入ったトレーを差し出しました。そして、「どっちがうちの製品か当ててみて」と試食を勧めました。味覚に自信のない私ですが、1つめの餡は、見た目がつやつやと光っており、ふっくらした感じ。口に入れると何とも言えない豆のふくよかな香りが口の中に広がりました。一方、2つめの餡もおいしくないわけではありませんが、1つめを食べた後では、風味が感じられません。もちろん、1つめの餡が同社製のものです。どれほどの違いがあるのかと思っていましたが、食べ比べてその差に驚かされました。


 豆を煮る機械設備と手間ひまだけでも多額の費用と時間を必要となりますが、すべては商品の味となってはっきりと現れてしまうのです。木内社長の菓子づくりに対するプライドを強く感じました。

 

ひとりひとりのお客様を大切にする

 

 

「材料である小豆を例に挙げましょう。仕入れたばかりの小豆には必ずゴミや砂などの混入物があるものです。これにどう対応するかが大きな違いなのですが、1つは仕入れたままの状態で製造して、お客様からクレームが来た際に、その都度対応する方法。2つめは、きちんと機械設備を整えて、手間をかけて混入物を取り除いてから製造する方法。1つめの方法であれば目先の資金は必要ありませんし手間が省けるためコストもかかりません。2つめの方法ですと、数千万の先行投資が必要となり、手間とコストが発生します。2種類の選択肢があった場合に、弊社は迷わず2つめの方法をとります。なぜなら、たった一度でも商品を買っていただいたお客様に不快な思いをさせたくないからです。」

 

 同社の商品が取引先の厳しい基準をクリアし、信頼を得ているのは、“より美味しいものを低価格で届けたい”という企業努力と、こうした木内社長の“買ってくれたお客様ひとりひとりを大切にしたい”、という気持ちを貫いてきたからと言えそうです。 

 

 また、木内社長は、「設備がいいだけではダメ、人にもお金をかけるべきだ」と語り、人材育成と職場環境の整備の大切さを指摘しています。そして、働くみんなが幸せを感じる企業にしたいという思いを語っていました。
「まずは働いている人が快適な会社でなければ良いものは作れません。経営者は、従業員が働きやすい環境をどうやったら提供できるか、どうしたらもっと効率の良い作業ができるかを常に考えるべきです。社員には『社長は毎回言うことが違うんだから』と笑われますが、そんな時は、『当たり前だろ、企業は常に改善・改革が必要なんだぞ』といってやるんです(笑)」

 

 

おわりに・・・

 

 

 近年、“コンプライアンス”が重要視されていますが、ニュースなどでは相変わらず次々と企業の不祥事が報道されており、どこか言葉だけが上滑りしている感があります。それに対して、長年の努力の積み重ねに裏打ちされた、木内社長の「お客さんに対して嘘をつかない、裏切らない」という言葉には大変な重みを感じました。そして、私たち消費者が何気なく買っている商品にも、作る人々の思いが込められているのだとあらためて考えさせられました。
 木内製菓㈱のますますの発展をご期待申し上げます!そして、出来立ての“ずんだ大福”ごちそうさまでした。柔らかくて最高においしかったです!

 

 

 

 


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