現代は「コンクリート文明」と表現されることがあるように、私たちの社会基盤である道路やビルには、必ずと言っていいほどコンクリートが使用されています。超高層ビル、橋、ダムなど、どれをとってもコンクリート無しには存在し得ません。
そして、コンクリートを作る上で欠かせないのが骨材と呼ばれる砂利ですが、天然素材である砂利は、"資源"と呼ぶに相応しい素材であり、日本全国どこでも手に入るわけではありません。茨城県においては、行方市,、鉾田市、鹿嶋市などが砂利の産出地として知られています。
今回ご紹介する有限会社茂木建材は、行方市において山砂を中心に採取している砂利採取販売業者です。同社は厳しい経営環境が続くなかでも、大手コンクリート製造業者を取引先として安定した売上を確保しています。
※ここでは、砂・砂利・玉石などを総称して「砂利」という。
法令順守と環境への配慮
同社は、行方市繁昌(旧麻生町)に本社・工場を置く砂利採取販売業者です。厳しい品質管理と環境管理のもと、山砂を中心に採取。自社のプラントで洗砂し、大手生コン製造業者に販売しています。 同社の歴史は、昭和48年、茂木宗五郎社長が砂利を買い取り、採取販売したことに始まります。それまでダンプカーの運転手として働いていた茂木社長は、同地が良質な山砂の産出地であることに目を付け、個人事業主として創業。その後、業務拡張に伴い、昭和62年に法人を設立しました。
砂利採取業は一般の人には馴染みの薄い業種であり、「砂利を掘ってコンクリート製造業者に引き渡すだけ」と思う方もいるかも知れませんが、実際に砂利を採取し、販売するまでには、砂利採取法、農地法、森林法、都市計画法などの法規制をクリアしなければならないため、様々な許可申請が必要となります。また、土地所有者や近隣住民との良好な関係のもとで承諾を得られるような環境づくりも欠かせません。。
例えば、山林を切り崩したり農地を掘って採取した場合、そのままの状態で返還するわけにはいきません。きれいに整地し、山林であれば苗木を購入し植林まで行い、また農地であれば農家に休業補償金を支払い、採取跡地は山土などで埋め戻し、農地に復元してから返還するといったことが必要となります。取材時にも同社が砂利を採取した後に埋め戻し、きれいにヒノキの苗木が植えられた様子を見せていただきました。
また、砂利を採取している間は、現場は土がむき出しの状態となるため、台風など大雨の際には思わぬ事故が発生する危険性もあります。そのため、切り崩した斜面には崩落防止に芝を植えるなど、災害への対策も万全に行っておく必要があります。 ここ数年、業界では受注獲得競争が激しく、販売単価の切り下げなどに加え、こうした付帯する経費が増えてきており、利益を確保することは容易なことではないそうです。
大型設備による圧倒的な処理能力
言うまでもなく、コンクリートの骨材として利用される砂利の需要は、建設業者の動向に大きく左右されます。長引く景気低迷と公共事業の減少の影響で建設業者の動きは鈍くなっており、砂利採取業者や建材業者の中にも苦戦を強いられている企業は少なくありません。ところが、同社ではバブル崩壊後も売上に大きな変動はなく、安定した業績を残しています。長年の取引による信頼関係と営業担当者による努力のおかげと茂木社長は言いますが、業界全体の受注のパイが減るなかで、ここまで販路を維持できている理由はどのような点にあるのでしょうか。
「まずは十分な砂利を確保していること、そしてその砂利を取引先の希望通りに運ぶことができる運搬力も大切です。砂利を届けるにしても、かつては何日に何立米の砂をこの現場に、という大まかな指定しかされませんでしたが、今では、宅配便のように1日のうち午前中9時に何立米、午後1時に何立米、3時に何立米という具合に細かな指定があります。そうした取引先の要望に応える態勢を整えられるかどうかが大きな差となります。」
取引先からすれば、何よりも注文通りに間違いなく商品を納入してくれることが一番です。長年の迅速かつ正確な納入実績が、取引先からの信頼につながっているのです。
そして同社の工場を訪れた方は、まず山のように積まれた砂利と洗砂プラントの大きさに圧倒されることでしょう。同社の競争力は、この豊富な在庫量と処理能力の高い設備が要となっています。さらに、輸送の面では自社で所有している車両以外にも、信頼できる運搬業者が十分確保できていることも、同社の安定した商品供給態勢を実現している重要な要素です。 なお、同社では、安定した在庫を確保するために、5年から10年先まで見越して採取権を購入し、計画的に砂利資源を確保しているそうです。
さらに、砂利の品質管理もとても重要だそうです。"砂利の品質"といってもピンとこないかも知れませんが、砂利にも用途に合わせ様々な規格が定められているのです。そして、品質管理と砂利資源の確保は次のように関係しているそうです。
「納品の際には、サンプルの品質検査を受け品質保証書を付けて納品をすることが必要とされます。砂利は採取された場所によって性質が異なるため、様々な現場から採取した場合、品質にバラつきが出てしまいます。均質な商品を提供するには、同じ現場から採取された砂利であることが一番であり、効率、品質管理の両面からまとまった砂利資源を確保できるかどうかが大きな意味を持つのです。」
保証付私募債を発行
同社には平成21年7月に、当協会の特定社債保証制度をご利用いただき、私募債を発行されました。この保証付私募債は、財務内容において一定の基準(適債基準)をクリアした企業が発行できるものであり、いわば"優良企業の証"と言えます。 「順調ですね」と言う私たちにも、茂木社長は次のように述べ気を引き締めていました。
「建設業界の低迷が続いており、これからも公共事業をはじめ建設業界は厳しい時代が続くでしょう。したがって、生コンそのものの需要も減少が予想されます。また、良質な資源の確保など様々な課題があります。今後はこれまで以上に今の取引先を大切にし、真面目に事業に取り組んでいく必要があると考えています。」
おわりに…
取引先の厚い信頼を得、盤石の事業基盤を築き上げている同社ですが、時代の流れを読み、更なる細かな努力を積み重ねながら堅実な歩みを続けようとしています。
当協会もそうした取り組みを応援していきたいと思います。有限会社茂木建材のさらなる発展をお祈り申し上げます!
|