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株式会社 カクライ

職人の感性とハイテク技術を融合させ、快適で安心な家づくりを応援する

 

 

 かつてわが国の家づくりの現場では、熟練の技術をもった職人が柱や梁となる木材に墨付けを行い、それに合わせてノミやノコギリ、カンナなどの道具を使い、切ったり削ったりといった加工を手作業で行っていました。こうした作業は、職人の"腕の見せどころ"でもあったのですが、昭和50年以降、工期の短縮と効率化が求められるなか、それらの技術に代わるものとして広まってきたのが「プレカット工法」と呼ばれるものです。

 

 プレカット工法とは、従来、職人さんが手作業で加工していた木造住宅の継ぎ手や仕口を、一口で言えば上棟までの部材を工場で専用の機械によって加工し、現場へ直送してしまうというものです。建築現場では、加工された部材をプレカット図面に従い組み立てる作業が中心となり、大幅な省力化・効率化を図ることができます。
 いまや都市部では、木造住宅の9割以上がプレカット材で建てられていると言われており、日本の建築業界において無くてはならない技術となっています。今回は、城里町においてプレカット加工を行っている株式会社カクライをご紹介します。


 

 

 

県内初のプレカット工場を建設

 

 城里町下青山に本社工場を置く株式会社カクライは、国産材はもとより、北米材(アメリカ・カナダ)や北欧材(フィンランド・ロシア・スウェーデン)など様々な国々から輸入された木材を、CAD、CAMと連動させた最新鋭の設備により加工し、建築業者を中心とした関東一円の取引先にプレカット材を供給しています。現在の社員数は約50名で、月産加工能力は約8,000坪、関東でも有数のプレカット加工業者に成長しています。同社を訪問された方はその工場と敷地の大きさに驚くことでしょう。

 

 同社は、昭和22年、製材業と木造住宅の建設業を目的として加倉井社長の父により設立された、合名会社加倉井組が母体となっています。加倉井社長は父が病に倒れたことから、30代という若さで同社を実質的に取り仕切ってきました。

加倉井社長とプレカット工法の出会いは、ある業界紙の記事を目にしたことがきっかけだったそうです。その画期的な建築手法を知った加倉井社長は大きな衝撃を受け、「今後、プレカットが建築業界を変えるのでは?」そんな風に感じたそうです。

 

 

 他県のプレカット業者の工場見学を行うなど情報収集を行うなかで、その将来性を確信した加倉井社長は参入を決断します。昭和62年に株式会社カクライを設立し、城里町石塚の約3,000坪の敷地に3億円を投資。県内初となる本格的なプレカット工場を建設しました。

 

 

プレカット工法が認知されるまでの苦労

 

 

 ところが、現在では多くの木造住宅がプレカット工法により建てられていますが、同社が設立された昭和60年代初頭はまだ職人が手作業で材料を加工することが当たり前の時代であり、建築業界でもまだ「プレカット」という名称すらほとんど知られてはいませんでした。
 また、職人さんの中には、この工法により仕事を奪われてしまうと思いこむ方もおり、この業界において理解を得ることがとても難しい時代でした。
 そのため、1カ月あたり1,000坪の受注を見込んでの大胆ともいえる設備投資でしたが、実際の受注は稼働から半年間で400坪程度と当初の目論見から大きく外れてしまいました。売上は計画を大幅に下回り、社員に給料を支払うことも厳しく、社長自らも工場で作業をしたり製品の配送をするなど、たいへんなご苦労をされたそうです。

 

 しかし、その後は全国的に住宅着工数が少しずつ増加し、住宅メーカー間の競争が激しくなる中で、工期の短縮や効率化が強く要求されるようになり、それと同時に職人の不足が建築業界の課題となりました。そこで注目されたのがプレカット工法を取り入れた効率化、少人化でした。平成の時代に入るとプレカット業界全体のマーケット規模は飛躍的に拡大し、木造建築におけるプレカット率は急激に増加しました。

 

 

 他社に先んじて最新鋭の設備を整え、システムを使いこなすことのできる社員を有していた同社は、そうした時代の追い風を受け大きく成長しました。「加倉井社長の狙いに時代が追いついてきた」と言ってよいでしょう。

 

 

ハイテク工法と職人の技が融合

 

 さて、ご紹介した通り、プレカット加工の工程には機械設備に頼る部分が多く、オペレーションのできる社員さえいれば簡単に操業できるように思われがちです。ところが、「伏図(注)」の作成やCAD入力担当者が、顧客である業者の家づくりに対する意図や、建築現場で部材を組み立てる大工の作業を理解することができなければ、良い製品を生み出すことはできません。その点、同社では、CADオペレーターを大工さんが担当しているので安心感が違います。建築業者とオペレーターが同じ視点に立っているため、円滑に意見交換をすることができ、顧客は安心して仕事を依頼することができるのです。


※伏図とは、一般の間取りでは表せない土台、柱、梁桁、母屋などの構造を表した図面で建物の平面図のことをいう。

 

「どんなに機械化が進んでもその設備を操作するのは人間です。顧客の立場に立って、加工された材料が現場でどのように使われているのかがイメージできなければ、良い家づくりのお手伝いはできません。」

 

 加倉井社長はこのように述べ、木の魅力を活かすための伝統的な工法を支えるハイテク・プレカット工法と、建築に精通したプロフェッショナルな人材が両立してはじめて価値のある製品を作り出すことできる、と強調します。

 

 

おわりに・・・

 

 時代の変化とともに、私たち日本人の住まいは大きく変化してきました。しかし、木の温もりを求める私たちの思いは変わることはありません。そして、現代の建築業界では、効率性、低コストとともに、高い品質が求められています。
 こうした時代に同社の技術は、日本人が愛する木の家を安定的に供給する、とても重要な役割を担っています。

 

「お客様に信頼され、選ばれる工場にしたい」 

 

 

 加倉井社長はこのように述べ、社員が一丸となって高度化、複雑化する顧客のニーズに応え、日本の建築業界に貢献していきたいと話していました。

 株式会社カクライの更なる発展をお祈り申し上げます!

 

 

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