茨城県信用保証協会

元気企業

2015年07月

株式会社橋本ブラシ製作所

『絶対に毛が抜けないブラシ』を開発、世界一を目指すねじりブラシメーカー

代表取締役 橋本 秀昭
創業 昭和30年
事業所 稲敷郡美浦村茂呂1049-1
事業内容 ねじりブラシの設計、製造
電話番号 029-885-5125
URL http://www.hsmt-brush.co.jp/

 株式会社橋本ブラシ製作所は美浦村に本社・工場を構え、工業用から医療・介護用まであらゆる産業で使用される「ねじりブラシ」の設計・製造を行っています。
 ねじりブラシとは、2本以上の芯線(金属線)で各種毛材を挟み、ねじり込むことで製造されるブラシを指します。
 平成27年5月25日、美浦村の本社を訪問し、橋本秀昭代表取締役に話を伺いました。

当社のあゆみ

当社の始まりは、橋本社長のお父様と叔父様が共同で東京都日野市においてねじりブラシの製造を専門で行う橋本ブラシ製作所を創業したことにさかのぼります。

創業当時は、建築現場で使用されるハケや食品用の洗浄ブラシなどを製造していました。

当時のブラシ製造業者は産業の中でも下位に見られることが多く、不当な値引きを要求されたり、要求に応じなければ取引を解消されたりと、厳しい経営が続いていました。

橋本社長は学校卒業後、料理人を目指して修行をしていましたが、お父様の怪我をきっかけに事業を引き継ぐことを決意、当社に入社しました。

平成元年に本社を美浦村に移転、平成7年にお父様が亡くなったのを機に橋本社長が事業を引き継ぎ、平成18年に法人化を行うとともに代表取締役に就任し、現在に至ります。

厳しい業況からの脱却

橋本社長は美浦村に工場を移転した後、他社との製品の差別化ができず価格勝負で取引が決められる不安定な経営状況からの脱却に着手します。

「展示会に積極的に出展し、お客様の要望や潜在的なニーズ、ねじりブラシの使用環境などを徹底的に調査しました。試作品は1本から製作し、顧客の求めに応じ何度でも洗浄能力の試験を重ねました。」
と橋本社長は当時を振り返ります。

価格競争に巻き込まれやすい汎用品から、洗浄や研磨に用いる特注ねじりブラシの製造に特化して顧客の求める性能を追求していった結果、それまで気づかなかったねじりブラシの無限の可能性と仕事の楽しさに気づいたそうです。

また、製品の開発において考案した製造方法は知的財産として国内外で積極的に特許を取得し、競合他社に対する優位性を確保する戦略を進めていきました。そのような取り組みと特注ブラシの性能の高さによって、競合他社との価格競争を回避することができ、取引先も当初1社に依存していたものが現在では500社ほどに増加し、工場はフル稼働の状態が続いています。

  • 顧客の要望に応じ、直径0.4mm~、全長10m以上のブラシも製造。

こだわりの製造方法

  • 芯線の巻き方の例。同じ毛材でも毛腰や密度が全く異なる。

ねじりブラシは、芯線の多様な巻き方や使用する毛材の種類(化学繊維・獣毛・植物繊維・金属線)、毛材の長さにより、様々な性能を発揮し、顧客のあらゆるニーズに対応することが可能です。現在は、10,000種以上のデータから用途に応じた製品の提供を可能としています。

製造工程は、ほとんどが熟練の職人の手によるものです。製造工程は材料調達の資材部、加工担当のねじり部・刈り込み部など7部門に分け、作業の効率化を図るとともに、各部門がそれぞれの工程に責任を持つことで、不良品を出さないように工夫がなされています。

製造に用いられる加工機械について橋本社長は、

「ほとんどの加工機械を独自開発し内製化しているため、競合他社ではなかなか真似ができないと思います。現在、更なる効率化を目指し、手作業にほとんどを頼っている製造工程を自動化できる自動加工機を開発中です。」
とおっしゃいます。

工場を見学させていただいて驚いたのは、女性の多さです。職人の大半が女性で、複雑で細かい作業を、和気あいあいとこなしている様子がとても印象的でした。

  • 芯線の加工・毛材の挟み込みとねじり・毛材の刈り込み・検品など、
    工程ごとに部署を分け、効率化している。

画期的な製品開発

毛材をループ状にし、
毛抜けを防止したブラシ。

橋本社長は、これまでのブラシの概念を変える、画期的な製品を開発しました。食品業界で問題となっている異物混入に対応した製品です。

使用劣化により毛材が抜け食品に混入することは、会社の存続を揺るがす大問題に発展します。それらの問題を防ぐため、毛材をループ状にし、毛抜けを完全に防止することに成功したのです。

「ブラシは毛先で洗浄や研磨の性能を発揮しているとそれまで思い込んでいたのですが、そうではないということにある日気づいたのです。ブラシは毛のはらの部分で性能を発揮しており、ループ型のブラシの試験を行った結果、従来型のねじりブラシと全く遜色のない性能を確保していました。」
と橋本社長は力を込めておっしゃいます。

このループ型ブラシは特許を取得済で、異物混入問題などで揺れる食品業界に売り込みを図っていく予定です。

社会問題解決への貢献

当社では、15年前ほどから、障がい者福祉施設へ製品の梱包作業を委託しており、現在では7か所の施設に年間60万本の梱包作業を発注しています。また、一部の施設へは、ブラシ製造技法の指導も行っており、障がい者の自立支援へ大きな貢献をしています。

「この取り組みのきっかけは、弱者いじめはするなと父親から教わってきたことが大きいと思います。障がい者を抱える家族は、自分たちが先立った後の行く末を心配しています。それを支えるのが、国や地域の力だと思います。そのような社会問題の解決に少しでも貢献できればという思いから始め、今では私が逆に助けられています。」
と橋本社長はおっしゃいます。

  • 当社が開発し、特許を取得した介護用歯ブラシ。柔らかく、口腔内を傷付けない。
    梱包作業は障がい者福祉施設に依頼している。

ねじりブラシ製造の今後

「入社そのものは父の怪我が主な理由でしたが、当時から『やるからには一等賞』という想いは変わりません。目指すのは世界一のブラシ製作所です。」

そう情熱的に語る橋本社長は、ジェトロを通じて、中国の広州や上海などへの展示会へ積極的に出展しています。海外の展示会へ出展した当初は、単価の安い海外企業と競争していけるのかという不安がありました。しかし、いざ出展してみると、「こんな精密なブラシは見たことがない。是非取引したい。」という声を外国の方からたくさんいただいたそうです。

「私の原点はやはり展示会なのです。こんなにも海外の需要があるということや、海外の方がどんなねじりブラシを求めているのか、一等賞になるためには何が足りないのかなど、新しい発見がたくさんありました。」

当社では現在、国際特許を積極的に取得し、海外との取引拡大に向けた準備を進めています。

おわりに

「ブラシを目当てにスーパーへ買い物に行く消費者は少なく、どちらかと言えば裏方の商品ですが、頭の先からつま先まで、生まれてから亡くなるまで、人はあらゆるブラシと関わりを持っているのです。」

橋本社長のその言葉は、ねじりブラシで社会を陰から支える誇りに満ちていました。

今回の取材では、産業の中でも下位に見られる風潮が大きかったというねじりブラシに人生をかけ、次々と画期的な製品を生み出してブラシ作りを芸術の域まで高めてきた橋本社長の開発力や行動力、顧客ニーズを限界まで突き詰める経営手法などがとても印象的でした。そのような長年の功績が地域社会やあらゆる業界から評価され、現在の会社の成長に結びついているのだと思います。

また、橋本社長の歩んで来られた道のりは、国内外の競合他社との価格競争や、製品の差別化に悩む多くの企業にとって、大きな希望を与えるものだと感じました。

今後のますますの発展をお祈り申し上げます。

  

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